X線よりも小さな物質を捉えることのできるX線自由電子レーザー


写真はイメージです。 photo by Sue Clark

皆さんは、レーザー光と言うと何を想像しますか?

プロジェクションマッピングを投影するための光、舞台演出で使用される光、CDなどディスクを読み取るための光、レーザーポインターの先から出てくる光など、これらは全てレーザー光です。

レーザー光は強さや役割など様々なものがあり、医療においても様々な分野で導入されています。今回は、「夢の光」とも言われる高性能なレーザー光について紹介します。

X線自由電子レーザーXFEL

X線自由電子レーザーは、今世紀になって実用化された新しいX線光源です。

X線自由電子レーザーは、英語でX-ray Free Electron Laserというため略してXFELと呼ばれています。レーザーでもそれ以外の光でも、光とは、波長や波の揃い方により見易さが変わってきます。

例えば、レントゲンに使われているX線は、光の波長が1万分の1という狭さのため原子レベルの小さなものを観察することができます。しかし、蛍光灯の光や太陽光と同じく、光の波が不揃いのため、原子レベル以下の小さなものを観察するのは困難でした。

これに比べ、XFELは光の波が揃っている、波長がX線より短く、膨大なX線光子を生成することができます。XFELの明るさはX線の100億分の100億倍であり、レーザーの照射速度を示すパルス幅は10兆分の1のため、10兆分の1秒の現象を捉えることができます。

これらの特徴から、XFELは物質の瞬時の動きを原子レベルで観察できると考えられています。

XFELの医療への応用

強度の強いXFELを試料に照射すると破壊されてしまいますが、より短時間でより強いXFELを照射することで、試料の構造が変わるまえに、構造を解析することができます。

現在、解析可能な結晶サイズには限界があり、数十㎛サイズの結晶から構造を決定するのは容易ではないですが、XFELを用いることでより微細な構造を解析することが可能になります。

XEFLを医療分野に応用した場合、創薬のスピードアップと効率化に貢献できるのではないかと考えられています。

細胞または、細胞小器官などの生体膜に付着しているタンパク質分子を膜タンパク質と言いますが、現在販売されている市販薬の60%以上が、膜タンパク質に作用する物質です。新薬開発には膜タンパク質の解析が重要な鍵を握っていると考えられています。

現在、 膜タンパク質の構造解析方法として、強力なX線が使われていますが、タンパク質を結晶化させるという困難な手順を要するため解析にかなりの時間を費やしています。

今後XFELが導入されれば、タンパク質の結晶化が不要になり、なおかつタンパク質1分子があれば、構造が解析できると考えられています。今後さらに研究が進められ、医療のみならず多方面での有用な応用が期待されています。

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