痛風に対するDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食の効果


写真は結節性痛風です。photo by Michael(a.k.a.moik)McCullough

痛風発作の原因となる高尿酸血症は年々患者数が増加し、現在では500万人以上にも及ぶと言われています。高尿酸血症は痛風発作だけでなく、腎障害や尿結石などを引き起こす危険性があるため、日ごろから尿酸値を上げないように努めることが大切です。

尿酸と高尿酸血症

尿酸は、遺伝子の構成やエネルギーに関わる重要な物質であるプリン体が分解される過程で生じる老廃物です。体内では常に尿酸の生成と排出が行われており、一定量以上はたまらないように調節されています。

しかし、何らかの原因により生成と排泄のバランスが崩れると尿酸が溶けきれなくなり、排泄されず体内にたまっていきます。溶けきれない尿酸は結晶となり、さまざまな場所に沈着し始め、痛風や腎障害、尿路結石などを引き起こす原因となります。尿酸値が7.0mg/dL以上になると溶けきれない尿酸が出てくると言われており、この値を超えないよう、予防・治療に努めることが大切です。

高尿酸血症を防ぐためには、まず生活習慣の見直しが重要となります。プリン体の多い食事や飲酒などさまざまな要因が尿酸値の上昇に関係していると言われています。そのため、レバーや干物などプリン体を多く含む食品の過量摂取を控えることや過度な飲酒を避けること、適度な運動を取り入れることなどは尿酸値の上昇を抑えることに効果的です。

高尿酸血症とDASH食

しかし、従来のプリン体の摂取を抑える食事療法は、効果が限定されることや持続が難しいことが指摘されていました。また、低たんぱく質の食事では心血管代謝疾患の悪化を招く可能性が危惧されていました。そのような状況の中、高血圧に対する食事療法であるDASH食が高尿酸血症にも有効なのではと注目を浴びています。

DASH食はカリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質の摂取を増やす一方で、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取を減らす食事療法です。果物や野菜、低脂肪の乳製品等を積極的に摂取することが推奨されています。近年、研究が進みDASH食が高血圧だけではなく尿酸値にも好影響をもたらすことが示唆されています。

一方で、典型的な西洋食(加工肉、菓子、フライドポテドなど)には尿酸値を高める食品が多く含まれているため、摂取量をなるべく抑えた方が良いと考えられてきました。しかし、これまで西洋食の摂取と痛風リスクの関連性を直接調べた研究は報告されていませんでした。

そこで、2017年5月に発表された論文「The Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet, Western diet, and risk of gout in men: prospective cohort study」では痛風とDASH食、西洋食との関連性について報告しています。

このコホート研究では、痛風の既往歴がない44444人の男性を対象に26年をこえる追跡調査を行い、食習慣と痛風との関係性について解析しています。

追跡調査の結果、1731人が痛風の診断基準に該当しました。食事と痛風との関連性を解析すると、DASH食の摂取が多いほど痛風のリスクが低く、逆に西洋食の摂取が多いとリスクが増す結果がみられました。

このことから、高血圧対策のDASH食は痛風のリスクも減少させる一方、西洋食は痛風リスクを増加させることが示唆されました。

研究が進み、食事と痛風との関連性が明らかになりつつあります。今後、より効果の高い食事療法が広がり、高尿酸血症や痛風の減少につながることが期待されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました