[医療事故調査制度はなんのための制度でしょうか]
医療事故調査制度と聞くと医療従事者でない方は、医療事故が起きたときに、患者や遺族のために医療事故調査を実施してくれる制度だと考えてしまうのではないでしょうか。
医療事故調査制度の制定には、過去の患者取り違え手術事件や消毒液誤投与死亡事件などの医療事故の発生が背景にあります。
医療事故調査制度は2015年10月1日に始まりました。「二度と同じような医療事故を繰り返さないためへの再発防止」と「医療機関が将来に向けてより安全な医療を提供できるようにすること」を目的とした医療機関のための制度です。
この医療事故調査制度が、具体的にどのような仕組みなのかみていきましょう。
[医療事故調査制度とは]
対象となる医療機関
すべての病院や診療所および助産所が対象となります。病院の大小に関係はありません。
対象となる医療事故
医療行為に起因したり、予期できなかった死亡や死産が対象になります。
「手術中になにが起きるかわかりません」、「一定の確率で死産の可能性があるかもしれません」のような一般的な説明だけでは予期できなかったということにはなりません。
写真はイメージです。 photo by pixabay
医療事故調査制度の流れ
1.医療事故に該当した場合、最初に遺族への説明を行い、センターへの報告を行います。 ・遺族には「医療事故の状況の詳細、医療事故調査制度についての説明、院内調査の実施計画、解剖や死亡時画像診断が必要な場合の同意」などの説明を行います。 ・センターには「医療事故発生時の状況、必要な患者の情報、医療事故調査の実施計画と今後の予定」などを報告します。 |
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2.医療機関において院内調査を行います。 ・院内調査では「診療記録などの確認、関係者からのヒアリング、必要に応じて解剖または死亡時画像診断の実施、医薬品や医療機器」などの確認を行います。 ・医療事故調査の目的は再発防止です。個人の責任を追究するために行われるものではありません。 |
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3.院内調査の結果をセンターと遺族に報告します。 ・報告する内容は「調査事項、調査の実施方法、臨床経過、原因、再発防止策」などです。 ・遺族への説明は遺族の希望を考慮して、書面か口頭もしくは書面と口頭かのいずれかの方法で伝えられます。説明される内容はセンターに報告した内容と同じですが、遺族にもわかるように説明されることが求められています。 ・院内調査の結果としてセンターに報告した内容に、遺族や医療機関が納得できない場合にはセンターに調査を依頼することができます。センターに調査を依頼できるのは医療機関からの報告があったものに限られます。 ・センターが調査した場合には遺族および医療機関にセンターから結果報告を行います。 |
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4.センターでは収集した情報の整理や分析を行います。同様の事故の医療事故の再発の防止への普及や啓蒙を行います。 ・報告された事例を一般化してデータの集積を行い再発防止策の検討や作成を行います。 ・再発防止策が医療機関に浸透しているか調査を行います。 ・すべての医療期間に対して必要な情報を提供して共有をします。 |
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5.医療機関の対応 ・医療への安全体制づくりを強化します。 ・医療機関全体として再発防止への取り組みを業務の一環として組み込みます。 |
医療事故として扱われなかった事例をセンターへ遺族が相談することができます。相談をうけた場合には医療安全支援センターを紹介するか遺族からの求めによっては医療機関の管理者に伝えます。
医療安全支援センターは全国の都道府県や保健所になどに380ヶ所設置されています。医療に関する苦情や相談への対応や医療の安全に関する助言および情報提供などを行っています。
[医療事故調査制度は育っていく制度]
医療事故調査制度は2015年10月1日に始まった制度です。いまままで数回の法改正が行われていますが、さらによりよい制度を作り上げていくことが目的です。
写真はイメージです。 photo by pixabay
医療事故調査制度は、つねに見直しや改善をしていく育成途中の制度であるとも言えます。あらたなる改善に向けて、現在も話し合われています。
この制度は医療機関のための制度ですが、医療機関において「医療行為をより安全に、より良くするための制度」です。いいかえると、安全で質の良い医療を患者さんに提供するための制度であるということになります。
このような制度が出来たことで、私たちは安心して医療を受けられることができるようになるのです。将来的には、いままで以上に充実した医療を受けられることができるようになるでしょう。
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