「がんからの復帰・チャド・ベティス投手を襲った病魔」

MBAコロラド・ロッキーズの右腕、チャド・ベティス投手28歳。昨季シリーズでは14勝8敗、防御率4.79を残し、本シリーズにおいても活躍が期待されていましたが、突然の不運が襲います。

精巣がん。第一線で活躍する大リーガー、身体能力に優れるアスリートにも病魔は訪れました。


写真はイメージです。 photo by pixabay

精巣がんとは

精巣腫瘍と呼ばれ、精巣にできる腫瘍を指します。精巣は男性ホルモンと精子を作る役割を持ち、精子を作るもとが精母細胞です。精巣がんの約95%は精母細胞から起り、生殖に関係する細胞を胚細胞と呼ぶことから、胚細胞腫瘍とも呼ばれます。

組織型の違いにより、精巣がんは「セミノーマ(精上皮種)」と「非セミノーマ」に分類。精巣の摘出後、放射線治療や抗がん剤による化学療法は分類に即した治療がおこなわれます。

若い年代に多く発症

がんという病気を中高年層の病気と思っている方も多いのではないでしょうか。ベティス投手の精巣がんが見つかったのは28歳。このことは、精巣がんが年齢だけで判断できない特徴を持つことを示しています。日本における割合は、10万人に1人程度と発症は比較的稀ですが、1~10歳までと20歳代~30歳代にかけて発症のピークがあり若い年代が多くかかる特徴を持ちます。

特に20歳代~30歳代の男性においては、白血病をはじめとする血液腫瘍以外では最も多く発症しますが、現在のところ明確な原因は分かっておりません。危険因子としては、停滞精巣など精巣の発育不全が挙げられます。


写真はイメージです。 photo by photoAC

早い進行と転移

精巣がんの症状は、片側の精巣が腫れるや硬さがみられるが一般的な症状です。痛みや発熱をともなうことは殆んどありませんが、がんの進行はとても早く、比較的短期間で転移する特徴を持ちます。腹部リンパ節における腹痛や腰痛、肺転移による咳や血痰など転移先によって、あらわれる症状がことなります。このため、精巣がんと確定した場合、転移の状態や組織型に関係なく、手術による速やかな精巣の摘出が原則です。

実際、ベティス投手も昨季シーズンオフのがん発見時には、迅速な精巣の摘出手術を受けており、

後の化学療法を経てマウンドへの復帰をはたします。

集学的治療による根治への期待

がんに対する治療方法には、手術治療、薬物療法、放射線治療などがありますが、これらを単独で用いるのではなく、がんの種類や転移状況に応じて組み合わせていく治療法を集学的治療と呼びます。

精巣摘出後、キャンプトレーニングに参加できるほど回復をみせたベティス投手も、リンパ節への転移が見つかり再び闘病生活へと戻ります。このとき用いられた治療法が抗がん剤による薬物療法です。もちろん、放射線治療の選択肢もある訳ですが、「セミノーマ(精上皮種)」と「非セミノーマ」の組織型の違いにより、放射線の効果が期待できないため、ベティス投手のケースにおいては用いられませんでした。

がんからの復帰・再びマウンドへ

病気と闘う、復帰するという本人の強い意思と集学的治療を用いることで、精巣がんは根治できるがんの一つです。

2017年8月14日、コロラド・ロッキーズの本拠地「クアーズ・フィールド」のマウンドにチャド・ベティス投手は戻ってきました。総立ちのファンが見守るなか、復帰した右腕は7回を投げ無四球無失点と好投。再びマウンドに立つベティス投手には、全国のファンや球界関係者、対戦相手のブレーブスからも祝福のメッセージが贈られました。


写真はイメージです。 photo by pixabay

早期発見によるリスク回避

集学的治療による根治で社会復帰の割合が高まった精巣がんですが、がん細胞の増殖、転移するスピードが早い特徴を忘れてはいけません。

がん対策のポイントは早期発見とよく言われます。精巣がんのリスク回避はまさしくこの点にあるといえるでしょう。腫れや硬さなど違和感を覚えた場合には、泌尿器科の専門医にすぐ診てもらうことが必要です。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました