エキノコックス症と北海道旅行

暑い夏にはどこか涼しい場所に避暑に出かけたくなりますね。日本で涼しい場所といえば北海道。北海道といえばその雄大な自然が魅力の一つです。

ところで皆さんは、北海道旅行の際にキツネと飲み水に関する注意書きを見たことはありますか?今回は北海道で問題となっている人獣共通感染症であるエキノコックス症についてお話ししたいと思います。

 

エキノコックス症とは?


エキノコックス症は条虫と呼ばれる寄生虫の一種が人間に感染する病気で、厳密には多包条虫と単包条虫を含む4種類に分類されます。しかし現在日本で動物から人への感染が確認されているのは多包条虫のみなので、今回は多包条虫について説明します。


多包条虫 photo by wikipedia

多包条虫はもともと野ネズミの肝臓に幼虫が感染し、そのネズミをキツネや犬などが食べることによって生活環が成り立っています。終宿主であるキツネや犬では条虫は腸に感染するため臨床症状を示すことはなく、糞便に条虫卵が排出されます。

 

人間に感染すると…


ところが犬やキツネの糞便に排出された条虫卵を誤って人間が口にすると、多包条虫の人間への感染が成立します。多包条虫は人間の肝臓をはじめとする脳や肺などの諸臓器に寄生し甚大な被害をもたらします。

多包条虫はその名前の通り、中間宿主であるネズミや誤って感染した人間の感染臓器に嚢胞を形成することが特徴で、その嚢胞が感染臓器を圧迫して症状を呈します。肝臓に寄生した場合の一般的な症状は黄疸や肝機能障害、脳に寄生した場合は痙攣などが起こります。

病巣の拡大は極めて遅く、成人では通常10年以上の歳月を経て臨床症状が発現し、死亡 率が 90%を超えることもあります。根本的な治療法は外科手術のみですが、感染臓器によっては手術が難しいこともあります。


写真はイメージです。 photo by photoAC

北海道での現状と年間発生率


多包条虫症の国内における発生数は2002年までで434名、また新たに年間10人前後の患者が認定されています。

北海道で問題になっているキツネにおける多包条虫の感染率は現在40%前後とされており、北海道に住んでいる犬または北海道に旅行した犬においても感染例が散見されています。

2002年には札幌市内の犬で、2014年には北海道に旅行した愛知県の犬における感染が発見されており問題となっています。

 

感染の予防と対策


多包条虫の人間に対する感染経路は大きく分けて二つあります。一つ目はキツネなどの野生動物の糞便に混じった条虫卵を飲料水または食物として摂取する場合。二つ目は犬などの愛玩動物に濃厚に接触することによって条虫卵を誤飲してしまう場合です。

前者に対しては感染地帯である北海道の生水を煮沸などせずに飲まないこと。また山菜などを食べる場合は十分に洗浄してから食べることが推奨されます。

後者に対しては感染地帯のキツネなどとの接触を避け、犬を旅行で北海道に連れて行く時に放し飼いにしないことが強く推奨されます。


写真はイメージです。 photo by pixabay

世界的な流行地


多包条虫が最も流行しているアラスカでは、ほぼ100%のキツネが感染していると言われており、ヨーロッパ、中国でも北海道と同じ40%程度のキツネが感染していると言われています。

また、ウシ、ウマ、ヒツジなどの有蹄類を中間宿主とする単包条虫症は世界各国の牧草地帯で見られています。

 

まとめ


発生数が多くないため名前以外あまり知られていないエキノコックス症ですが、人間に感染すると重篤な症状を引き起こします。北海道は日本人なら一度は訪れる場所だと思いますので、身の安全の確保のためにもしっかり知識を身につけてくださいね。

 

 

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