近年、帯状疱疹は増加傾向にあり、1000人当たり約5人が発症すると言われています。
いくつかの薬が治療薬として承認されていますが、既存の薬では交差耐性をしめすことが問題となっており、新しい機序の薬の開発がもとめられていました。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、ヘルペスウィルスの一種である水痘・帯状疱疹ウィルス(VZV)によって引き起こされる感染症です。60歳以降に発症率が急激に高くなるといわれています。
水痘・帯状疱疹ウィルス photo by wikipedia
VZVに初めて感染すると水痘(水ぼうそう)を発症し、発疹や痒みなどの症状があらわれます。このさい、増殖したウィルスは、神経をつたって脊髄後根神経節に入り込み、水痘の症状がひいたあとも、潜伏し続けます。
長い間、無症状で経過しますが、加齢やストレスなどにより免疫力が低下すると、潜伏していたVZVが再活性し、帯状疱疹が発現することがあります。
初期症状として、神経に沿って、ピリピリとした痛みや痛痒さがあらわれ、数日~1週間ほど経つとその場所に帯状の赤い発疹が発現します。頭痛や軽い発熱、リンパ節腫脹などの全身症状が出る場合もあります。
発疹が発現してから約1週間までは、範囲がどんどん広がっていきますが、それ以降はかさぶたとなり、多くの場合回復にむかっていきます。発症から治癒までは、だいたい20日かかるといわれています。
皮膚症状の回復とともに、痛み症状もなくなっていくことがほとんどですが、痛みや異常な感覚が残る帯状疱疹後神経痛になる場合もあります。
写真はイメージです。 photo by photoAC
治療方法
治療は、できるだけ早く、抗ヘルペスウィルス薬による薬物療法を開始することが重要となります。早めに開始することで、治癒を促進するだけではなく、帯状疱疹後神経痛の発症予防にも効果があるとされています。
また、抗ヘルペスウィルス薬と併せて、症状に応じた鎮痛剤や外用薬が用いられることもあります。
治療のメインとなる経口抗ヘルペスウィルス薬ですが、現在臨床では、アシクロビルやバラシクロビル、ファムシクロビルが使用されています。これらの薬は、核酸類似体とよばれ、dGTPと競合的に拮抗することで、ウィルスのDNA複製を阻害し、増殖を抑制します。
高い有効性が報告されていますが、これらの薬は同じところに作用することから、しばしば交差耐性(1種類の薬剤に対して耐性をもつと、同時に別の種類の薬剤に対しても耐性を獲得すること)が問題となっていました。
写真はイメージです。 photo by photoAC
そこで、新機序の抗ヘルペスウィルス薬として開発されたのが、アメナメビル(商品名;アメナリーフ)です。帯状疱疹に対し、1日1回400mgを食後に服用します。
アメナメビルは、ヘルペスウィルスのDNA複製に必須の酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することで、2本鎖DNAの開裂およびRNAプライマーの合成を抑制します。ウィルスの増殖を初期段階で阻害することにより、抗ウィルス作用を発揮すると考えられています。
アメナメビルは、既存の抗ヘルペスウィルス薬と作用機序が異なるため、交差耐性をしめしません。また、主に糞中に排泄されることから、腎機能に応じた用量設定が必要ないことも特徴のひとつです。
国内臨床試験では、バラシクロビルに対する非劣性が確認されており、2017年7月に帯状疱疹の適応症で承認を取得しています。
今回、新機序のアメナメビルが開発されたことで、既存の抗ヘルペス薬に耐性をしめすウィルスにも高い効果を発揮することが推測されています。今後、多くの患者さんの症状改善に寄与することが期待されます。
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