ドイツからの報告「高齢者のインフルエンザリスク」 インフルエンザへの認識が足りない

[高齢者とインフルエンザ]

冬になると流行するインフルエンザ。高い熱、関節痛、倦怠感などでつらいですよね。人によっては軽く済んでしまうことや症状がほとんどでない場合もあります。

インフルエンザの罹患率をみてみると乳幼児や小学生の罹患率が高く、10歳代後半以降から高齢者まではそれほど変わりはありません。

インフルエンザによる死亡率は乳幼児がやや高く、60歳ぐらいから高くなりはじめて高齢者になればなるほど急激に高くなっていきます。日本では死亡者の80%以上が高齢者です。

高齢者がインフルエンザにかかると、典型的なインフルエンザの症状ではなく「微熱、呼吸器症状、元気がない」といった症状がみられることがあるため気が付くのが遅れる、持病を抱える人が多くみられ持病の悪化につながる、肺炎などの合併症を併発して重症に陥るリスクが高いことから十分対応が必要になります。

写真はイメージです。photo by pixaboy

インフルエンザと高齢者のリスクについて、2017年8月にドイツの「ArzteZeitung」に恐るべき高齢者のインフルエンザリスク 予防接種の徹底を!の記事が掲載されました。

[インフルエンザの高齢者のリスクについて-ドイツ発]

2016年~2017年にドイツではインフルエンザA型(H3N2)が猛威を振るいました。ロベルト・コッホ研究所(RKI)が全国の患者の調査を行った結果、全体の93%を占めていたのがこのタイプです。とくに、H3N2ウイルスは高齢者が感染すると重篤な症状を引き起こしやすいことが危険視されています。

RKIが発表した報告書によると、2016年~2017年の冬の時期に報告されたインフルエンザ患者数のうち約25%は入院治療が必要なほど重症化しており、死亡者数のうち94%は60歳以上の患者でした。

2年前の2014年~2015年の同時期のデータと比較してみると、H3N2ウイルスは62%程度、インフルエンザ患者数のうち約15%強は入院治療、死亡者数のうち79%が高齢者でした。

H3N2ウイルスの割合、重症患者数、高齢者の死亡者数の割合が増加傾向であることがわかります。

また、インフルエンザワクチンの高齢者の接種率は2014年~2015年が50%であったのに対して、2016年~2017年には過去6年間で最低の36.7%まで下がっていました。

2016年~2017年のインフルエンザの流行はどれほどのものだったのでしょうか。過去20年間で最悪といわれた2014年~2015年のデータと比較してみましょう。

RKIはインフルエンザを起因とする超過死亡者数は21300人にのぼると推測していました。2016~2017年の超過死亡者数のデータについては、いまだに非公開であるとしています。

しかし、流行のシーズン外に感染者数は2014年~2015年は80600人、2016年~2017年は114000人以上と増加しています。また、シーズン中に報告されたインフルエンザによる直接の死亡者数は2014年~2015年は254人、2016年~2017年は717人と大幅に増加しています。

※超過死亡者数:WHOにより提唱された考え方で直接の死因がインフルエンザとされていないものも含んだ死亡者の推定数です。この値は、直接的もしくは間接的にインフルエンザによって生じた死亡者数の総計という事になります。たとえば、インフルエンザによる肺炎で死亡した場合に死因をインフルエンザとすれば直接的、肺炎とすれば間接的ということになります。

RKIの会長を務めるLothar H. Wieler氏は、「本格的なシーズンを迎える前にインフルエンザの危険性について深刻に考えていかなければならない」と強調しています。

予防接種委員会は高齢者、妊婦、慢性疾患をもつ患者に対して、インフルエンザワクチンの接種を推奨しています。さらに、ハイリスク群の人と接触する機会のある医療スタッフや看護スタッフなども予防接種を行うべきであるとしています。

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2016年~2017年には200以上の地域でインフルエンザの流行が報告されており、その中には院内感染56件と老人ホーム及び介護施設内での感染21件が含まれています。とくに、Wieler氏が懸念しているのは医療従事者の予防接種率の低さです。

マンハイムで開催されたイベントで、医療従事者の予防接種に対する意識の低さとそれにより引き起こされる患者への感染リスクの高さについて述べています。過去のインフルエンザシーズンの際に医療従事者1200人を対象とした調査結果によると、予防接種を受けた医者は約56%、看護師は35%のみにとどまっていました。

予防接種を受けない理由として、「失念していた」、「有効性に疑問がある」といったものが多くあがる一方で、「予防接種によってインフルエンザを発症する恐れがある」といった全く根拠のない理由を答えた人もいたと報告されています。

医療従事者がワクチンを接種することは、結果的に患者への感染防止にもつながることになります。

このことについてWieler氏は、「集団免疫」という概念で説明するよりも、たとえば「祖父が百日咳の予防接種を受けることは孫を病気から護ることにもつながる」という観点から説明していく方が受け入れられやすいだろうと述べています。

さらに、Wieler氏はワクチン接種率の低さの要因のひとつとして「情報不足」についても指摘しています。「私は現在56歳だが、これまで医者から予防接種の話を持ち出されたことがない。これは憂慮すべき事態である」とも述べています。

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ドイツと日本では国民性や医療事情が異なりますが、日本ではどうなのでしょうか?

[日本ではどうなの]

ドイツからの記事ではインフルエンザへのリスクが過小評価され認識不足であること、十分な対策が取られていないことが述べられています。

・過小評価され認識不足である点については日本ではどうでしょうか。ネットを見てみるとありとあらゆる情報が散乱していますよね。

・インフルエンザワクチンの接種は「ウィルスに感染した時に症状を軽くし、重症化させない」ことが目的であるとともに「周りの人にインフルエンザウィルスを拡散させない」効果もあります。ドイツからのレポートで「集団免疫」という考え方がでてきましたが意識されているものでしょうか。

・対策についてはどうでしょう。厚生労働省を中心に地方自治体などがインフルエンザの啓蒙活動、高齢者のインフルエンザ接種の推奨、医療機関向けの情報提供、高齢者施設で働く職員への周知などの活動を行っているのを御存知でしょうか。もちろん、医療機関や高齢者施設では院内や施設内で十分な対応を行っているところが多くあります。

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ドイツからの記事で述べれらていることは、日本でも十分にあてはまります。インフルエンザのリスクを減らしていくことの重要性が改めて認識されますね。

 

 

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