子宮頸がんに対するベバシズマブ追加の有効性

1年の間に、1万人以上の女性が子宮頸がんを発症し、約2900人の患者さんがそれにより命を落としていると報告されています。早期に発見できれば予後の良いがんですが、進行すると治療が難しくなるため、より有効な治療法をもとめて、研究がすすめられています。

子宮頸がんとは

子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部にできるがんです。


女性生殖器の構造 photo by wikipedia

以前は、40~50代が発症のピークでしたが、現在は20~30代の若年層にも多くみられるようになってきています。

発症には、ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染が深く関わっており、患者さんの約9割からHPVが検出されます。HPVは性交渉で感染するウィルスのひとつですが、感染しても、多くは症状の出ないまま免疫によって排除されます。しかし、HPVが排除されず、長い間感染状態が続く場合もあり、このことが、がんの前段階である異形細胞の発現・増殖につながり、子宮頸がんが発症すると考えられています。

子宮頸がんは、子宮の入り口にできるため、観察や検査が容易で、発見しやすいがんと言われています。細胞診では、がん細胞だけではなく、前段階である異形細胞の検出もできるため、早めに発見することが可能となっています。

早期に発見できれば、比較的治療がしやすく、予後のいいがんといわれています。しかし、進行すると治療が難しくなることから、定期的に検診を受け、早期発見につとめることが大切です。また、近年ではHPVの感染を防ぐワクチンを接種し、子宮頸がんを予防することもできるようになっています。

治療

子宮頸がんは、大きさや浸潤、転移の程度により0期からⅣ期のステージにわけられます。がんが上皮に留まっている状態を0期、小骨盤腔をこえて広がるか、膀胱や直腸に広がっているものをⅣ期に分類します。

子宮頸がんの治療には、手術、放射線治療、薬物療法があり、これらを単独もしくは組み合わせて治療を行います。ステージや病状、合併症、年齢などを考慮して、患者さんに合った治療法が選択されます。

病変部を取り除くことが可能であれば、基本的に手術が行われます。手術とあわせて放射線や抗がん剤を用いた補助療法が行われる場合もあります。

進行し、がんが骨盤内に広がっている場合や他臓器に転移している場合には、放射線治療や、放射線療法と化学療法を組み合わせた同時化学放射療法が行われます。


写真はイメージです。 photo by photoAC

ベバシズマブ追加の効果

化学療法では、プラチナ製剤を中心とした単剤または多剤併用療法などが行われていますが、さらに高い有効性をもとめ、従来の化学療法にベバシズマブを追加する研究がすすめられています。

ベバシズマブは、血管内皮成長因子に対する分子標的薬であり、血管新生を抑制し、がん細胞に栄養が届かないようにすることで、増殖や転移を抑える効果を発揮します。

Bevacizumab for advanced cervical cancer: final overall survival and adverse event analysis of a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial (Gynecologic Oncology Group 240)」では、治療抵抗性、再発または転移性子宮頸がんに対するベバシズマブ併用の有効性を報告しています。

治療抵抗性、再発または転移性子宮頸がん患者さん452人を対象に、標準化学療法単独群(シスプラチン+パクリタキセルまたはトポテカン+パクリタキセル)と標準化学療法にベバシズマブを追加する群に分け、全生存期間などについて解析しています。

その結果、全生存期間は、標準化学療法単独群で13.3か月であったのに対し、ベバシズマブ追加群では16.8か月となり、有意な延長がみられました(ハザード比0.77)。また、放射線治療歴のない患者さんのみを対象にした解析でも、単独群で16.8か月、ベバシズマブ追加群で24.5か月となり、有意な延長効果がみとめられました。一方で、増悪後生存期間は、単独群で7.1か月、ベバシズマブ追加群で8.4か月となり、有意な差はみられませんでした。有害事象は、消化管腟瘻の発生頻度が、単独群で1%であったのに対し、ベバシズマブ追加群では15%の患者さんにみられました。

これらのことから、標準化学療法にベバシズマブを追加することで、全生存期間が延長することが示唆され、ベバシズマブの有効性がみとめられました。


写真はイメージです。 photo by photoAC

今回の論文を含め、いくつかの研究結果からベバシズマブの子宮頸がんへの有効性がしめされ、日本でも、2016年に「進行または再発の子宮頸がん」に対する適応が承認されています。今後、より多くの子宮頸がん患者さんの症状改善に寄与することが期待されます。

 

 

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