ダニ媒介性ボレリア感染症(回帰熱・ライム病)について

前回に引き続き、今回もダニ媒介性の4類感染症である回帰熱およびライム病についてご紹介したいと思います。この二つの病気はどちらもボレリアと呼ばれるスピロヘータ細菌によって引き起こされ、日本では主にシュルツェマダニによって媒介されます。日本での発生数は少ないですが海外では非常に流行している地域もある病気です。


病原体のボレリア photo by wikipedia

・ボレリア感染症とその疫学

ライム病:古典的にはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)によって引き起こされる感染症で、アメリカのニューヨークを中心とする東北部の風土病です。アメリカでは流行が拡大しており社会問題となっていますが、日本での報告は2010-2015年年間10-20人程度で、7月に多いとされています。また日本での病原体はボレリア・ガレニ(B. garinii)やボレリア・アフゼリ(B. afzelii)です。

特徴的なマダニ刺咬部を中心とする限局性の遊走性紅斑が、およそ80%の患者に現れます。それとともに筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱などのインフルエンザ様症状が認められます。慢性例では関節炎、心筋炎、慢性脳脊髄炎を引き起こすこともあります。


特徴的な遊走性紅斑 photo by wikipedia

回帰熱:世界的には数10種類のボレリア細菌を原因とする病気で、アフリカ・アメリカ・中央アジアで流行しており、マダニおよびシラミによって媒介されます。致死率はシラミ媒介性回帰熱で4-40%、マダニ媒介性回帰熱で2-5%です。日本における回帰熱は輸入感染症を除くと、シュルツェマダニおよびパブロブスキーマダニによって媒介されるボレリア・ミヤモトイ(Borrelia miyamotoi)によって引き起こされます。回顧研究によって2011年に、日本で2人の患者がボレリア・ミヤモトイに感染していたことが示唆されています。現在までにボレリア・ミヤモトイ感染による死亡例は報告されていません。

国外で流行している回帰熱の一般的な症状は、発熱期と無発熱期を交互に繰り返す周期性発熱です。この症状は平均7日の潜伏期を経て発症し、肝腫大などの症状を伴うことがあります。ボレリア・ミヤモトイ感染によっておこる症状はまだ完全には解明されていませんが、発熱、倦怠感、頭痛を伴うことが知られています。他の回帰熱で見られる周期性発熱は全体の約11%程度でしか見られないとの報告もあるため、典型的な回帰熱の症状を示さない場合もあるようです。

・回帰熱とライム病の比較

日本における感染はどちらも北海道や長野県などの高山地帯に生息するシュルツェマダニによって媒介される点や、治療法がテトラサイクリン系抗生物質であることが類似点であると言えます。

ボレリア・ミヤモトイ感染は近年ロシアやアメリカの一部で発見された疾患であり、病原性が詳しく分かっていませんが、ライム病のような特徴的な遊走性紅斑はあまり見られないようです。


写真はイメージです。 photo by illust AC

・最後に

ダニ媒介性ボレリア感染症は日本での発生数が少ないため、あまり身近に感じない病気かもしれませんが、国外の流行地では非常に蔓延している場所もあります。国外に出かける際には、一度確認してみることをお勧めします。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました