「笑い」でうつを吹き飛ばしてみよう! ドイツのコメディアンのうつ病に関する取り組み

日本では、毎年3万人以上の人が自殺でなくなっていると報告されています。また、統計にはでてこない多くのひとが、精神疾患をともなう障害になやんでいます。今回は、すこし前の記事になりますが、2017年8月30日のÄrzte Zeitung onlineからドイツのコメディアン達のうつ病への取り組みを紹介します。

フランクフルトのコメディアンであるHenni Nachtsheim氏はうつ病に対する人々の意識を向上させるべく、9月10日の世界自殺予防デーに出席しました(Pete Smith談)

フランクフルト発 – 「きっと楽しい夜となることでしょう」と語ったのはHenni Nachtscheim氏です。フランクフルトのコメディアンを知っている人であれば誰もその言葉を疑うことはないでしょう──例えそれが9月10日にオッフェンバッハで発された、とても深刻な問題についての発言だとしても。


写真はイメージです。 photo by pixabay

同じく「Bodo Bach」という芸名で有名な同業者・Robert Treufel氏と共に、Nachtsheim氏は「笑いでうつを吹き飛ばそう」と人々に呼び掛けています。世界自殺予防デーで行われたこの慈善活動の報酬はフランクフルト反うつ病同盟に寄付されるようです。

ドイツでは2015年、全体で10078人もの人々が自ら命を絶ちました。薬物や交通事故、殺人といった様々な死因よりも自殺で命を落とす人の方が多いのです。

自殺者の約9割がなんらかの精神病を患っており、その中でも最も多いのが「うつ病」患者でした。

調査によると、重度のうつ病患者のうち約70%は自殺願望を抱き、そのうち25%は自殺の方法や場所などを具体的に企てています。そしてそのうち15%が、実際に実行してしまっているのです。

まだまだ低い メディア内における「うつ病」の扱い

「大きな社会的意義があるにもかかわらず、うつ病がメディアで取り上げられる機会はまだまだ少ない」精神科・心身医学科・心理療法科の院長を務めるAndreas Reif教授はそう語りました。


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2015年に創立されたフランクフルト反うつ病同盟の会長である同氏は、この現状を打破したいと考えています。

この同盟の後援者である彼は、うつ病の人々を特に「深い悲しみ」から救い出したいと考えています。「もしもこの活動が少しでもこの問題の解決の糸口となるのならこれ以上のことはない」

『外ではお日様が輝いているよ』

かつて自分にはうつ病にかかってしまった友達がいて、彼女との経験がこのテーマへの関心を引き起こしたのだとNachtsheim氏は語っています。

1957年にヴッパータールに生まれた彼は、当時1978年から1990年にかけてロックバンド・Rodogau Monotonesの歌手兼サクソフォン奏者として、ヘッセンの境界を越えてその名を馳せていました。

「あるときから彼女は数日間職場に顔を出さなくなってね。僕は家に訪ねていったんだ。その子はベッドに横たわったままで、そんな彼女を見て僕は何かくだらないこと…それこそ『外ではお日様が輝いているよ』だなんて言って元気づけようと思った。そんな僕に対して彼女は『何も知らないくせに』と言った。今思えば彼女の言うことはもっともだったよ」「その後彼女は癌によって亡くなってしまったんだ。この一連の出来事が、僕が「うつ病」について深く考えるきっかけになった」

しかし、日本と同様に、ドイツ国内におけるうつ病についての認知度はまだまだ低いのが現状です。


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未だにうつ病について様々な説が人々の中に蔓延っていて、それがうつ病患者の治療に多大なる影響を及ぼしています…実際にそういった場面を目撃したReif氏はそう説明しています。

調査によれば一般市民の69%は、「抗うつ薬が人の性格を変えてしまう」と、更には80%もの人が「そういった薬の依存性は高い」と考えています。

また、人々の多くは鎮静作用を伴う抗うつ薬と抗精神病薬の区別がついていません。「一般の人々に対して医療費を削減するなら何処を削るべきかと尋ねると、アルコール依存症やうつ病、統合失調症といった病気の治療関連が最初に挙げられるのです」

「人々のうつに対する理解の無さは、当事者である患者にも大きく影響しています」「うつ病を患っている人のうちかかりつけの医者で治療を行っているのはたったの40%しかいません」と同氏は続けました。

実際に病院にいってうつ病の診断を受け、適切な治療をうけられているのは5人に1人しかいないのです。「ちゃんと治療を受ければ6~8割はきちんと改善できる病気なんですけどね」

日本でも多くの人が、うつ病を代表とする精神疾患とそれに伴う社会的な偏見、社会的な障壁に苦しんでいます。


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今回のドイツにおける、自殺予防における試みは、まだまだ日本国内では、聞かれない取り組みです。

誰もがわかってる「自殺はいけないこと」、「精神疾患は病気であること」、「病気であるがゆえにしっかりと治療を受けなければならない」こういった当たり前のことが、なかなか浸透していかない社会には、疾患当事者の問題だけではなく、精神疾患に対する偏見が根強く残っているのかもしれません。こういった世界的な記念日を機会に、より多くの偏見がとれ、多くの人の貴重な命が救われることが期待されます。

 

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