歯が少ないと肺炎死のリスクが上がる?!歯の喪失と肺炎死リスクの関係

高齢化率の上昇などから、日本における肺炎による死亡率は年々増加しており、近年では脳血管疾患を抜いて死因の第3位となっています。高齢化の加速とともに今後も増加すると予測されている肺炎ですが、今回、歯の残数と肺炎死のリスクとの関連性について報告されました。

肺炎とは?

肺炎は、細菌やウィルスなどの病原体が肺に侵入することで発症する急性の炎症性疾患です。さまざまな病原体が原因となりますが、市中肺炎(病院外で日常生活を送っている中で罹患する肺炎)では、肺炎球菌が病原菌となる頻度が最も高いといわれています。


肺炎レンサ球菌 photo by wikipedia

発熱や咳、痰などおもな症状は風邪と似ていますが、風邪では上気道や気管支に炎症がみられるのに対し、肺炎は、肺の中の肺胞に炎症が起こります。肺胞は、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う役割を担っているため、炎症が起きるとうまく働くなり、呼吸困難を引き起こすこともあります。

風邪と勘違いしやすい肺炎の症状ですが、高齢者では発熱や咳などの症状があまりみられず、なんとなく元気がない、食欲がない、息が浅いといった様子で周りも気付かないまま重症化するケースもよくみられています。

肺炎で命を落とす方は、年間約12万人に達しており、そのうちの95%以上は65歳以上となっています。肺炎にかかるリスクを減らすためにも、うがい、手洗い、マスクなどの日常の感染予防や、予防接種、禁煙、規則正しい生活を送るなど個々人の肺炎予防への取り組みが重要性を増しています。


写真はイメージです。 photo by illust-ac

歯の喪失と肺炎死の関係

通常、永久歯は親知らずを含めないと合計28本あり、加齢とともに少しずつ少なくなっていきます。年をとるに従い自然に抜ける歯もありますが、歯を失うおもな原因は虫歯と歯周病といわれています。

歯周病は、糖尿病や狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などさまざまな疾患との関連が示唆されていますが、今回、歯の喪失と肺炎死のリスクとの関係性が「Tooth loss and pneumonia mortality: A cohort study of Japanese dentists」より報告されました。

この研究では、日本の歯科医師らが行なっているコホート研究LEMONADE Studyをもとに、19775人の参加者(51.4±11.7歳、男性92.0%)の肺炎による死亡率との関連を調査しています。

その結果、中央値9.5年の間に肺炎でなくなった方は68名で、0~14本の歯を喪失した群に比べて、15~27本の喪失群では肺炎による死亡リスクのハザード比が1.60、全ての歯を失った群では2.07となりました。歯1本あたりに換算すると1.031倍となり、喪失する歯の本数と肺炎死のリスクに関連がみられたと報告されています。

このことから、歯の喪失本数が増えるほど肺炎で命を落とすリスクが上昇することが示唆されました。

歯の喪失が肺炎と関連する理由として、歯周病による炎症により肺での炎症が促進されることや、歯周病菌および歯周病関連酵素が肺に侵入し何らかの悪影響を与えること、歯が少なくなることで咀嚼機能が低下し栄養状態が悪化することなどが考えられています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

肺炎が原因となり命を落とす方は、高齢化にともない年々増加しており、予防の重要性が増してきています。

今回の研究により、歯の残数が少ないほど肺炎死のリスクがあがることが示唆されました。長く健康的に生活するためにも、お口の中の環境にも気を配ってみましょう。

 

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