抗菌薬使用によりアレルギー疾患の発症リスクが上がる?!〜2歳までの抗菌薬使用歴と5歳時でのアレルギー疾患有病率との関連〜

日本人の約2人に1人は、なんらかのアレルギー疾患に罹患していると推定されており、患者数は年々増加傾向にあります。さまざまな因子がアレルギーの発症に関わっていると考えられていますが、今回、生後2歳までに抗菌薬使用歴があると、5歳時までにアレルギー疾患を発症するリスクが高まる可能性が報告されました。


写真はイメージです。 photo by photo AC

アレルギーとは?

私たちの身体には、細菌やウィルスなどの異物が体内に入ってきたときに、これらを排除しようする免疫機能が備わっています。本来は身体を守る免疫ですが、アレルギー疾患では、免疫が特定の物質(アレルゲン)に対して過剰に反応してしまい、全身的または局所的にさまざまな症状を引き起こします。

アレルギーには、Ⅰ〜Ⅳの型がありますが、代表的なアレルギー疾患である気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーショック、花粉症は主にⅠ型に分類されます。Ⅰ型は即時型とも呼ばれ、症状の発現にはIgE抗体が深く関わることが知られています。

花粉やハウスダスト、食物などのアレルゲンが体内に入ると、IgE抗体が作り出され、皮膚や粘膜の下にあるマスト細胞の表面に結合します。そこに、再びアレルゲンが侵入し、マスト細胞に結合しているIgE抗体と出会うと、マスト細胞が活性化してヒスタミンなどの炎症性物質が放出され、かゆみなどのアレルギー症状が発現します。

アレルギー疾患をもつ子供の数は増加傾向にあり、気管支喘息の有病率は幼稚園児で約20%、アトピー性皮膚炎の有病率は4ヶ月〜6歳で12%前後と報告されています。


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抗菌薬の使用歴とアレルギー疾患の有病率

アレルギーは、アレルゲンの他にアレルギー体質などの個体要因や大気汚染への曝露などの環境因子が引き金になり発症すると考えられています。環境因子としては、環境中に放出されている化学物質や、胎児期から小児期の受動喫煙などさまざまな因子がアレルギーの発症リスクとして報告されています。

そのなか、抗菌薬の使用によりアレルギーの発症リスクが上がるという報告が海外でされていました。そこで、「Influence of antibiotic use in early childhood on asthma and allergic diseases at age 5」では、日本の子供たちを対象に、2歳時までの抗菌薬使用歴と5歳時でのアレルギー疾患有病率との関連性について検討しています。

902人の子供を対象に、2歳までの抗菌薬使用の有無とその後5歳時点でのアレルギー疾患の有病率について追跡調査しています。

その結果、2歳までの抗菌薬使用歴と5歳時の気管支喘息の有病率をみるとオッズ比1.72と有意な関連がみられました。また、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎においても、それぞれオッズ比が1.40、1.65と有意な差がみられました。

抗菌薬の種類別にみると、2歳までのセフェム系抗菌薬使用と、5歳時での気管支喘息(オッズ比1.97)およびアレルギー性鼻炎(オッズ比1.82)との間に関連がみられました。また、マクロライド系抗菌薬の使用歴は、アトピー性皮膚炎(オッズ比1.58)と関連していました。

このことから、2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患の有病率との間には有意な関連があり、抗菌薬を使用した群でアレルギー疾患の発症リスクが高くなることが示唆されました。

抗菌薬がアレルギー疾患の発症に関与する機序については解明されておらず、また5歳以降どのように関連していくかについても、さらなる研究が必要としています。


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アレルギー疾患の患者数は年々増加傾向にあります。アレルギーの発症にはさまざまな因子が関わっていますが、今回の報告により、2歳までの抗菌薬使用が5歳時でのアレルギー疾患のリスクを高める可能性が示唆されました。

細菌感染症の場合には抗菌薬の投与は必要なものとなりますが、風邪などのウィルスが原因となる感染症の場合、抗菌薬は効果を発揮しません。今回報告されたアレルギー疾患発症のリスクの他にも、抗菌薬による副作用、耐性菌の発現などのリスクを考慮して、適切に抗菌薬を使用していくことが大切です。

 

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