新しい脂質異常症の治療薬「パルモディア」 併用できなかった薬と併用が可能に

健康診断や人間ドックなどでコレステロールや中性脂肪が高いといわれたことはないでしょうか。コレステロールや中性脂肪が高い状態を「脂質異常症」といいます。

脂質異常症(文末ミニコラム参照)は、以前は「高脂血症」といわれていました。厚生労働省の平成26年度の調査では、脂質異常症の患者数は206万人以上と推計されていて、男女比では女性が男性の2.5倍です。

コレステロール値 photo by hakucyou

脂質異常症のおもに生活習慣に大きく関連しています。治療の第一選択肢は、食生活の改善と適度な運動など生活習慣の改善です。

生活習慣の改善をおこなっても脂質異常症が改善しない、糖尿病や高血圧など他の疾患がある、遺伝的に動脈硬化を起こしやすいことが分かっているなどの場合には動脈硬化などの合併症を予防するために薬物療法が行われます。

脂質異常症の薬物治療にはさまざま薬があります。おもに、悪玉コレステロールを下げるスタチン系の薬、中性脂肪を下げるフィブラート系の薬がよく用いられています。

2018年6月に、興和創薬株式会社からフィブラート系の新薬として「パルモディア(一般名:ペマフィブラート)」の販売が開始されました。

従来からあるフィブラート系の薬に比べて薬理作用は同じですが作用機序が異なり、「中性脂肪を下げる効果が高い、併用禁忌だった薬との併用可能、副作用が少ない」などの利点があるといわれています。どのような薬なのかみていきましょう。

―薬物治療はスタンチン系の薬から―

脂質異常症の原因の多くは悪玉コレステロールです。悪玉コレステロールを減らす効果が高いスタチン系が第一選択薬として用いられます。スタチン系の薬には中性脂肪を下げる効果や善玉コレステロールを増やす効果もあります。

写真はイメージです。 photo by ac-illust

悪玉コレステロールの値が基準範囲内で中性脂肪のみが高い場合、スタチン系の薬を投与しても中性脂肪の値が著しく高い場合にはフィブラート系の薬が用いられます。

フィブラート系の薬は中性脂肪を下げる効果がもっとも高いといわれています。善玉コレステロールを増やす効果や悪玉コレステロールの代謝を促進する効果もあります。

スタチン系の薬と従来からあるフィブラート系の薬は原則併用ができません。「横紋筋融解症」という副作用があらわれる場合があるからです。

横紋筋融解症とは

横紋筋という心筋や骨格筋など筋肉が壊れてしまう病気です。おもに骨格筋が侵されます。赤褐色の尿、筋肉痛、脱力感などの症状が現れ、重症化すると急性腎不全を発症するおそれがあります。

-フィブラート系の薬の中性脂肪を下げる仕組みは-

中性脂肪は、肝臓で遊離脂肪酸から中性脂肪が合成され血中に放出されています。血中の中性脂肪はリポ蛋白リパーゼ(LPL)と呼ばれる酵素の働きで遊離脂肪酸へと分解され、各組織に存在する細胞へと取り込まれます。

中性脂肪の合成や分解に関与しているタンパク質として「PPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター)α」があります。おもに骨格筋、肝臓、腎臓に発現します。

PPARαは、肝臓では中性脂肪の合成抑制や血中のLPL合成を促進して中性脂肪の分解促進することで血中の中性脂肪を減らす作用を持っています。

フィブラート系の薬は、PPARαに結合して働きを活性化させ、血中の中性脂肪の低下およびLPL合成を促進させて中性脂肪を分解させる働きを持っています。

-従来のフィブラート系の薬とパルモディアの違いは-

新しく販売されたパルモディアが従来のフィブラート系の薬と異なる点は、選択的にターゲットとなっているPPARαに結合してPPARαの構造を変化させて脂質代謝に関わる遺伝子以外に影響がでにくい薬になっています。

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従来のフィブラート系の薬は、単純にPPARαに作用するために脂質代謝関連の遺伝子以外に作用することで、腎機能低下につながるクレアチニンが増加や肝機能異常などの副作用を起こすことがわかっています。

これらのことから、パルモディアは副作用の出現率が低くなるといわれています。

パルモディアは、選択的に作用することから「SPPARMα(選択的PPARαモジュレーター:Selective PPAR-α Modulator)」と呼ばれています。

パルモディアと従来のフィブラート系の薬と比較した臨床試験が行われています。

○従来のフィブラート系の薬が中性脂肪の変化率が-30%前後、パルモディアは-42%と効果が10%程度優れている。

○副作用頻度が従来のフィブラート系の薬が10.8%、パルモディアは2.7~5.4%と低い。

○スタチン系の薬の単独療法とスタチン系の薬とパルモディアとの併用療法群を比較したところ、併用療法の方が中性脂肪を50%優位に低下させ、有害事象の発現頻度に関しては両者の間に差はない。

臨床試験の結果から、従来からあるフィブラート系の薬ではむずかしかったスタチン系の薬との併用がパルモディアでは可能になりました。脂質異常症の薬物療法に新たな選択肢が増えたともいえるでしょう。

-バルモディアの効果、用法、注意事項、副作用はなに-

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◇基本情報

規格は0.1mgで薬価は33.9円です。効能は脂質異常症の治療薬です。悪玉コレステロールのみが高い場合には第一選択薬とはなりません。

用法は、成人には1回0.1mgを朝夕2回服用。年齢や症状に応じて適宜増減されます。最大用量は1回0.1mg×2を1日2回です。

◇禁忌事項

重度な肝障害や肝硬変(Child-Pugh分類BとC)、胆道閉鎖、中度の腎障害(血清クレアチニン値2.5mg/dl以上)、胆石、妊婦もしく妊娠の可能性がある女性には使用できません。

※Child-Pugh分類は肝硬変の状態を5つのポイントから病気の重さを点数化して分類したものです。A、B、Cの順に重くなります。

シクロスポリン(免疫抑制剤)、リファンピシン(抗結核薬)と併用できません。パルモディアの血中濃度が著しく上昇します。

◇注意事項

肝障害や肝硬変(Child-Pugh分類A)、軽度の腎障害(血清クレアチニン値1.5mg/dlから2.5mg/dl未満)の場合には慎重に投与する必要があります。

スタチン系の薬、クロピドグレル(抗血小板剤)、クラリスロマイシン(抗生物質)、フルコナゾール(抗真菌薬)など併用に注意が必要な薬があります。

腎機能に異常がみられる場合にスタチン系の薬との併用は治療上やむを得ない場合のみ使用されます。

◇副作用

腎障害がある患者に投与すると「横紋筋融解症」が出現する可能性があります。パルモディアが販売されてから時間は経っていませんが、横紋筋融解症の副作用はいまのところ報告されていません。

胆石症、糖尿病が1%程度、肝機能異常などが0.3%から1%の確度で出現する場合があります。

◇その他

食事による影響はありません。ただし、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品との摂取は薬の効果が減弱するおそれがあるといわれています。

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パルモディアは、日本で「研究、開発、日本人対象に治験」を行われた薬です。現在は海外では販売を認可されていませんが、日本から海外に展開することを視野にいれて開発されたものです。

海外では心血管疾患発症および再発予防などを目的とした臨床試験を実施中で、グローバルな形での上市することを目指しています。

脂質異常症と診断されてパルモディアを処方されたときに、普段と違う様子がみられる場合には主治医のお医者さんと相談してくださいね。

ミニコラム 脂質異常症の判断基準と原因は

空腹時の血液検査の結果やリスクとなる危険因子の有無などが判断基準になります。標準的な判断基準は以下の通りです。

悪玉コレステロール(LDL) 120~139mg/dlで境界域高コレステロール血症

140mg/dl以上で高LDLコレステロール血症

善玉コレステロール(HDL) 40mg/dl未満で低HDLコレステロール血症
中性脂肪 (トリグセリド:TG) 150mg/dl以上で高トリグリセライド血症
※総コレステロール値から善玉コレステロール値をひいた値が170mg/dl以上の場合には「non-高HDLコレステロール血症」と呼ばれます。

※悪玉コレステロールについては、「いままでの病歴、性別、年齢、肥満、喫煙習慣、血圧、家族の病歴」などの危険因子によって基準値の上限の見方が変わります。

脂質異常症の原因は、「加齢、過食、偏食、運動不足、肥満、喫煙、過度の飲酒、ストレス」などの生活習慣が大きく関係しています。

生活習慣以外にもさまざまな原因があります。遺伝的(体質的)な要因、甲状腺機能低下症などのホルモンの分泌異常、糖尿病や腎臓病などの疾患、ステロイドや避妊薬などの薬、女性の場合には閉経が原因になることがあります。

脂質異常症が問題になるのは「動脈硬化」の原因になることです。とくに、悪玉コレステロールが大きな要因になります。善玉コレステロールが低すぎても、中性脂肪が高すぎても動脈硬化を引き起こします。

脂質異常症には自覚症状はありません。気がつかずに脂質異常症を放置していると、動脈硬化が進んで血管が詰まりやすくなって「狭心症、心筋梗塞、脳梗塞」などの病気を発症するリスクが高まります。

中性脂肪が非常に高い状態が続く場合には、「急性膵炎、糖尿病、脂肪肝」などを原因になることもあります。

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