パルボシクリブ 「手術不能または再発乳がん」の適応で承認

乳がんは、早い段階で発見できれば予後が良く、5年生存率は9割をこえるといわれています。しかし、進行または再発の乳がんは、現代の医療をもってしても治癒が困難であり、有効な治療法の開発がすすめられています。


写真はイメージです。 photo by photoAC

乳がんに対する薬物療法

浸潤・転移がみられる進行または再発乳がんは手術が困難となることも多く、目にみえない小さな転移をともなう可能性も高いことから、からだ全体に効果が期待できる薬物治療が中心に行われます。

乳がんの薬物療法では、ホルモン受容体(HR)やHER2発現、がん細胞の増殖活性を検査し、がん細胞のサブタイプに適した療法(化学療法、ホルモン療法、抗HER2療法)が選択されます。

化学療法では、複数の抗がん剤を併用もしくは順番に使用し、がん細胞の根絶を目指します。現在、臨床では、たくさんの抗がん剤が使用されており、おもに、プラチナ製剤やトポイソメラーゼ阻害薬、代謝拮抗薬、アルキル化薬、微小管作用薬とよばれる薬が使われています。

ホルモン療法は、HRが陽性の患者さんに対して行われます。がんの増殖を促進するエストロゲンの働きを妨げる、もしくは生産を抑えることで、がん細胞の増殖を抑制する方法です。閉経の有無により治療薬は異なりますが、抗エストロゲン薬やLH-RHアゴニスト製剤(閉経前)、アロマターゼ阻害薬(閉経後)がもちいられます。

抗HER2療法は、HER2陽性の患者さんに適する治療方法です。HER2タンパクに結合し、がんの増殖を抑える作用のある抗HER2ヒト化モノクローナル抗体が使用されます。


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新機序の治療薬

現在まで、たくさんの薬が開発されていますが、進行・再発乳がんの治癒はいまだ困難であり、新しい治療薬の誕生がもとめられていました。そこで、新機序の乳がん治療薬として開発されたのが、「パルボシクリブ(商品名;イブランス)」です。

パルボシクリブは、経口サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬であり、現在、世界70か国以上で承認されています。

CDK4/6は、ひとつの細胞が分裂し、ふたつの娘細胞を生み出す過程(細胞周期)で主要な働きをする酵素であり、細胞増殖をひきおこします。そこで、CDK4/6阻害薬は、CDK4/6の働きを阻害し、細胞周期の進行を停止することで、細胞増殖を抑制する効果を発揮します。

日本も参加した第Ⅲ相臨床試験では、HR陽性HER2陰性の閉経後進行乳がん患者さんを対象に、パルボシクリブとレトロゾール(アロマターゼ阻害薬)を併用した群とプラセボ+レトロゾール群を比較したところ、パルボシクリブを併用した群で有意な無増悪生存期間の延長がみられたことを報告しています。また、閉経の有無を問わないHR陽性HER2陰性進行乳がん患者さんを対象に、パルボシクリブとフルベストラント(抗エストロゲン剤)併用を検討したところ、プラセボに比べて有意な無増悪生存期間の延長がみとめられています。

これらの試験を含めて、いくつかの研究結果から、2017年9月、日本でもパルボシクリブの製造販売が承認されました。

「手術不能または再発乳がん」が適応であり、用法用量は、「ホルモン療法併用において、通常、1日1回125mgを3週間連続して経口投与し、1週間休薬。これを1サイクルとして投与を繰り返す。患者の状態により適宜減量する。」となっています。(ファイザー プレスリリースより)


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今回、日本でも新しい機序の薬であるパルボシクリブが承認されたことで、進行または再発乳がん治療の選択肢が広がることが期待されています。

 

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