新機序の便秘治療薬「エロビキシバット水和物(商品名;グーフィス錠5mg)」とは

便秘症は、女性や高齢者で罹患率が高い疾患で、日本においては約450万人の方が悩まされているといわれています。身近な疾患である便秘症ですが、2018年4月新たな作用機序をもつ治療薬が発売となりました。

便秘のタイプ

ヒトの大腸は約1.5メートルあり、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸で構成されています。


大腸の構造 photo by illust-ac

大腸にたどり着いた食べ物のカスは、はじめは液状の状態ですが、大腸を通るうちに水分および塩類が吸収されて固形状となり、便として排泄されます。

大腸はぜん動運動により横行結腸からS状結腸へと便をスムーズに送り出しています。その後、一定量の便が直腸にたまると、仙髄の排便中枢に伝わり、排便が促されます。

便秘は、大腸そのものに障害がある、もしくは大腸の働きに異常が起きることで生じる症状で、原因によって機能性便秘と器質性便秘に分けられます。

器質性便秘は、大腸の炎症や術後の癒着、がんなどにより、腸そのものによる通過障害や排出障害で起こる便秘のことをさします。

一方、機能性便秘は、排便までの一連の流れに問題が生じている状態で、さらに弛緩性便秘、けいれん性便秘、直腸性便秘に分けられます。

弛緩性便秘は、結腸でのぜん動運動の低下により起こり、便をスムーズに送り出すことができないため生じる便秘です。けいれん性便秘は、結腸の一部がけいれんを起こし、正常な便の移送が妨げられることにより起こります。直腸性便秘は、排便の反射が弱くなっており、便が直腸にたどり着いても便意が起こりにくいため生じる便秘です。

便秘の治療では、食生活や運動などの日常生活の見直しや薬物療法が行われます。薬物療法では、症状により、患者さんに合った便秘薬が選択されます。(詳しくはこちらを参照)


写真はイメージです。photo by photo AC

新機序の薬、胆汁酸トランスポーター阻害剤とは?

現在、数種類の便秘薬が臨床で使用されていますが、2018年4月、新たに胆汁酸トランスポーター阻害剤「エロビキシバット水和物(商品名;グーフィス錠5mg)」が、EAファーマと持田製薬から発売されました。「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」に適応をもち、用法・用量は、「通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする」となっています。

エロビキシバッドは、新機序となる胆汁酸トランスポーターを阻害する便秘薬です。回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーターを阻害することで、胆汁酸の再吸収を抑制し、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させる作用を有しています。胆汁酸は、大腸管腔内への水分の分泌、消化管運動を促進させるため、便秘症状を改善すると考えられています。

実際に、国内の第Ⅲ相試験では、完全自発排便回数の投与期間第1週の変化量において、プラセボ群では0.62±1.44回であったのに対し、エロビキシバッド10mg群は3.39±3.86回と有意に大きな値を示したことや、初回投与後24時間以内の自発排便発現患者の割合において、プラセボ群では41.3%であったのに対し、エロビキシバッド群では85.5%と有意に高い割合を示したことが報告されています。また、便の硬さや、長期投与についても良好な結果が報告されています。

副作用は、46.3%にみとめられ、主なものとして腹痛(19.0%)、下痢(15.7%)が報告されています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

便秘症は、多くの方が悩まれている疾患です。現在までに数種類の薬剤が使用されていますが、今回新しく、胆汁酸トランスポーター阻害薬が発売となりました。新たな機序の慢性便秘症治療薬であり、患者さんの症状改善に貢献することが期待されています。

 

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