スピオルトレスピマットとスピリーバレスピマットの比較〜呼吸機能や運動能力への効果〜

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、喫煙者に多い肺の炎症性疾患であり、男性の死亡原因の第8位にもなっています。一度発症すると治癒することはありませんが、適切な治療により進行を遅らせることは可能となっているため、早期から適切な治療を受けることが大切です。


写真はイメージです。 photo by illust-ac

COPDと薬物療法

COPDの症状は、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性のせき、たんが特徴となります。喘鳴や発作性呼吸困難などの喘息のような症状がともなう場合もあります。一方で、これらの症状に乏しい方もおり、実際にCOPDの治療に取り組まれている患者さんは1割にも満たないとも言われています。

また、COPD患者さんの3分の1は他の病気を合併しているとも言われており、合併しやすい病気として、糖尿病、心臓病、骨粗鬆症、抑うつなどが挙げられます。これらの病気を合併している場合、経過が悪く、死亡リスクも高いことから、注意が必要です。

COPDの主な原因は喫煙であり、有害物質を長期間吸い込むことにより、肺の中の気管支に炎症が起き、せきやたんが出たり、空気の流れが低下します。また、炎症により肺胞が破壊されると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能の低下を引き起こします。

一度変化を起こしてしまった肺は、元に戻ることはなく、治療では、症状の緩和・維持、将来リスクの低減が目標となります。治療は、禁煙、薬物治療、呼吸リハビリテーションが中心に行われます。


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薬物治療では、抗コリン薬やβ2刺激薬、テオフィリン製剤といった気管支を拡張する作用のある薬が用いられます。

軽度〜中等度の場合には、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)または長時間作用性β2刺激薬(LABA)を単剤で使用しますが、単剤で効果が不十分な場合には、LAMAとLABAを併用します。必要に応じてテオフィリン製剤や喀痰調整薬が追加されることもあります。また、気流閉塞が重症で増悪を繰り返す場合や喘息病態が合併している場合には、吸入ステロイド薬を使用することもあります。

スピリーバレスピマットとスピオルトレスピマットの比較

現在、LAMAおよびLABAの単剤に加え、いくつかのLAMA/LABA配合剤が発売されています。その中で、2015年12月から販売開始されているのが、スピオルトレスピマット28吸入/60吸入です。スピオルトには、スピリーバの有効成分でLAMAであるチオトロピウムに加えて、LABAであるオロダテロールが配合されています。

現在までの研究により、LAMA/LABA配合剤は、LAMA単剤と比較して呼吸機能を改善させることは示されていますが、運動耐容能や身体活動性に対する効果をみた研究は、あまりありませんでした。そこで、今回報告された論文「Efficacy of tiotropium/olodaterol on lung volume, exercise capacity, and physical activity」では、スピオルトレスピマットの呼吸機能、運動耐容能、身体活動性に対する効果をスピリーバレスピマットと比較し、検証しています。

40歳以上の日本人のCOPD患者さん(ステージⅡ〜Ⅳ)184名を対象に、スピオルトとスピリーバを6週間にわたりクロスオーバーデザインで比較検討し、治療開始後6週時点の最大吸気量(薬投与60分後)や6分間歩行距離、身体活動性について解析しています。

その結果、治療開始後6週時点の最大吸気量はスピオルトが1,990L、スピリーバが1,875Lとなり、スピオルトにより有意な改善効果がみられました。

運動耐容能をみた6分間歩行距離では、全体集団でみると差はみとめられませんでしたが、%FEV1が50%未満の患者さんや6分間歩行試験を完遂できた患者さんを対象に後解析をしたところ、スピリーバに比べてスピオルトで6分間歩行距離の有意な延長がみられました。

また、身体活動性においても、全体集団でみると差は見られなかったものの、3軸加速度計の装着が2日以上かつ1日の装着時間が8時間以上あった患者さんを対象に後解析したところ、2METs以上の1日平均活動時間がスピオルトで有意に長くなっていることが確認されました。

有害事象は、両群ともに同程度であり、懸念すべき有害事象は認められなかったと報告されています。

このことから、スピリーバに比べ、スピオルトの吸入では、有意に最大吸気量を改善し、COPD患者さんの運動能力を潜在的に高めることが示唆されました。また、身体活動性でも一定の条件下で活動時間を延ばすことが示されました。


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COPDは、一度発症すると元に戻ることはありませんが、早期に適切な治療を行うことにより、症状を緩和したり、進行を抑制することが可能です。今後も、さまざまな研究によりエビデンスが構築され、患者さんに合った有効な治療が行われていくことが望まれます。

 

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