CTコロノグラフィー(大腸3D-CT検査) 大腸検査の実力は?

[大腸の検査というと]

大腸の検査というと大腸に内視鏡によって検査する内視鏡検査が思い浮かびますよね。受けたことのある方は「検査前に多量の下剤を飲むのがいやだ、検査がつらい、痛い、恥ずかしい」などあまりよい感じがしなかったりことや「大腸の内視鏡は危なくないの」と考えてしまうことはありませんか。

写真はイメージです。photo by irasutoya

大腸に内視鏡を入れないCTコロノグラフィー(大腸3D-CT検査)を知っていますか。バーチャル内視鏡ともいわれています。

内視鏡を大腸内に入れて検査するのではなく、マルチスライスCTを用いてからだの外から大腸を撮影します。撮影した画像は本物の内視鏡で大腸内をのぞいたかのように立体的な画像で映しだします。

バーチャルな画像ですから、360℃どの方向からみた画像でも作り出せ、あとで必要な画像だけを取り出すことや大腸を平たく開いたような画像も作り出せます。このことから再現性や客観性が高いといわれています。

CTでの撮影なので大腸以外の肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、副腎などといった臓器の状態もあわせて確認することも可能です。

このCTコロノグラフィーはどのような形で検査を行っていくのでしょうか。

[CTコロノグラフィーの検査はどうやるの]

CTコロノグラフィーの検査手順は大腸内視鏡と検査手順は同じです。

写真はイメージです。photo by irasutoya

検査のための前処理-前々日~前日

検査の前々日の夜に軽い錠剤の下剤を飲みます。検査前日は朝食から夕食まで検査食を食べます。食後に少量の造影剤を飲みます。検査前日の夜にコップ半分ほどの水に薬を溶かした下剤を服用します。下剤の量は大腸内視鏡検査と比較して少量です。前処理の実施方法は医療機関によって多少の違いがあります。下剤の服用は前日で終了します。

CTコロノグラフィー検査-当日

1.腸の動きを止めるための薬であるブスコパンを注射します。ただし、心疾患、緑内障、前立腺肥大症などの方は使用できません。お医者さんと相談してください。

2.CTの寝台に横になります。肛門から直径約1cmのチューブを少し入れて炭酸ガスを注入し腸をふくらませます。炭酸ガスは腸管から速やかに吸収されます。検査中に腹部に膨満感を感じますが、検査後10分程度で吸収されます。検査後の腹部の膨満感、腹痛はほとんどありません。

3.CT撮影をします。うつ伏せと仰向けで2回の撮影を行います。CTの1回の撮影時間は15秒前後程度です。CT撮影が終われば検査終了です。

すべての検査にかかる時間は約15分~20分程度です。CTの撮影動画をみてみましょう。

大腸CT [CT Colonography]

大腸内視鏡と比較して患者さんの負担を考えると楽な検査といえるでしょう。しかし、CTコロノグラフィーには長所と短所があります。

[CTコロノグラフィーの長所と短所]

CTコロノグラフィーの長所と短所をみていきましょう。大腸内視鏡と比較しています。

長所・鎮静剤や鎮痛剤を服用しなくてよい。痛みがほとんどありません。

・大腸内視鏡で心配される腸内を傷つける、穿孔するという危険性はきわめて低いとされています。

・大腸内視鏡では見落としがちな大腸のひだの裏などの死角の病変の観察ができます。

・大腸内視鏡の挿入が困難な方でも検査が可能です。腹部全体を撮影するので大腸以外の情報も把握できます。

短所・平坦な病変や5ミリ以下の小さな病変の発見がむずかしいとされています。

・病変の色や固さなどはわかりません。腸の炎症性の変化の確認には向きません。

・生検ための細胞の採取やポリープ切除などの治療はできません。CT撮影に伴う最小限の被爆が避けられません。

・設備が整っている施設が必要で実施できる施設が限られます。

※「妊娠の可能性があるもしくは妊娠中」、「腸閉塞が疑われる」、「腎機能が極めて悪い」などの方はCTコロノグラフィーを受けることはできません。

※現時点では小さな病変を確実に診断でき、生検のための細胞採取や治療までを行うことができるのは大腸内視鏡だけです。

CTコロノグラフィーの精度の検証については、アメリカで大規模な調査が行われ臨床試験成績が良好であったことから、有効な大腸がんの検診法としてガイドラインに掲載されています。欧米に続くかたちで日本でも共同臨床試験が行われて精度についての確認が行われました。

ポリープについては10ミリのポリープでがんの可能性は10%程度です。CTコロノグラフィーで10ミリのポリープの感度は95%以上で大腸内視鏡より同等以上の精度であることが確認されています。以下の動画の中盤以降でポリープが右側にあるのがわかります。

大腸CT

医療施設によってはCTコロノグラフィーで大腸だけではなく胃の検査にも使用しています。特殊な例では気管支などの手術時にも用いる場合もあります。

CTコロノグラフィーはあくまでも検査として用いるものです。異常が見つかった場合には、より詳しく検査するために大腸の内視鏡検査を必ず受ける必要があります。

[大腸がんによる死亡者数は増加しています]

現在、大腸がんによる死亡者数は女性では1位、男性では3位と、年々、増加しています。早い段階で発見された場合の生存率は高いので早期発見はかかせません。大腸がん検診の受診率は約25%、集団検診で便潜血反応が陽性でも精密検査の受診率は約50%程度といわれています。

写真はイメージです。photo by pixaboy

日本の大腸内視鏡検査の技術や普及度は世界でトップクラスです。CTコロノグラフィーは短所に書かれているような問題点を解決できるレベルまで至っていません。とくに、平坦な病変や小さなポリープなどの病変の診断機能が低いことが問題です。最近は放射線被爆を少なくした低線量撮影が行われていますが被爆も気になるところです。

CTコロノグラフィーをおこなえる施設は限られていますが、大腸がん検診や精密検査の選択肢の一つとしてCTコロノグラフィーもあると考えるといいのではないでしょうか。

たとえば、痛みなどが心配で大腸内視鏡検査はどうしてもと考えてしまう場合などに、CTコロノグラフィーと大腸内視鏡のどちらで検査するかをお医者さんの話を聞いて納得したうえで決めるといいのではないでしょうか。

 

 

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