潰瘍性大腸炎の新たな検査試薬 「カルプロテクチン モチダ」

潰瘍性大腸炎については、当サイトでも「潰瘍性大腸炎にたいする日本初の泡状注腸製剤」「ベドリズマブの潰瘍性大腸炎にたいする承認申請」、「シンポニーの新たに潰瘍性大腸炎にたいする適応の追加」などの記事を報告していますが、今回は、2017年に保険収載された「便中カルプロテクチン」について紹介します。

まずは、いつもと同じように、潰瘍性大腸炎とはどういう病気かについて確認していきます。


写真はイメージです。 photo by photo AC

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は、年々患者数が増加している病気で、現在、日本では約17万人の患者さんが罹患していると推定されています。

20代の若年層にも多くの発症がみられ、下痢や腹痛などによりQOLにも影響をおよぼすことから、効果的な検査・診断方法・治療法がもとめられています。

疾患としては、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる疾患です。 炎症部位は、基本的に直腸からはじまり、連続的に上行へと広がっていきます。

患者さんに病状により症状は異なりますが、おもに、下痢や血便がみられ、腹痛をともなう場合もあります。重症になると発熱や体重減少、貧血などの全身症状が現れることもあり、症状が長引くことで大腸がんのリスクが上昇することもしられています。

潰瘍性大腸炎の検査方法

従来は、潰瘍性大腸炎の検査方法は、採血検査でみる炎症の反応の変化、内視鏡による目視・病理検査、便培養による感染症の除外などがおもな検査方法でした。

今回紹介する「糞便中のカルプロテクチン測定」は、潰瘍性大腸炎の患者さんにたいして、病態把握を目的として、ELISA法により測定して計測します。

カルプロテクチンとは、主に好中球より分泌されるカルシウム結合タンパクで、炎症や細菌の感染、上皮細胞が分化する際に発現します。腸管のなかに便とともに放出されたカルプロテクチンを計測することで、症状を把握します。

潰瘍性大腸炎は、症状の再燃と寛解をくり返すことで知られているため、侵襲性の低い糞便検査で病状を確認できるカルプロテクチンの測定は、有用な検査であると考えられています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

現在は、保険検査でおこなう場合には、3ヶ月に1回の検査が認められていますが、患者さんの病状から必要であると判断される場合には、月に1回まで検査が可能ですが、大腸内視鏡検査と同一月におこなった場合には、主要なもののみ算定可能となっています。

カルプロテクチンの検査精度と注意点

便中カルプロテクチンの検査精度は、感度96.7%、特異度64.9%と感度が高く、検査結果が、陰性であれば潰瘍性大腸炎の可能性は、低いと考えられます。

いっぽうで、判定をするうえでの注意点としては、大腸がん、ポリープ、憩室炎を有している場合、NSAIDsを内服している場合、大腸内視鏡検査後3日以内では、検査結果が高めにでることが知られています。

実際に、便中カルプロテクチンが高値であった患者さんグループにおいて、潰瘍性大腸炎の治療薬である5-ASA製剤を調節することで、症状の再燃率が有意に低かったという報告もあります。

潰瘍性大腸炎を代表とする炎症性腸疾患に関しては、まだまだ知られていないことも多くあり、今後も、よりいっそう侵襲性のひくい検査の開発や原因の究明が望まれています。

 

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