SGLT2阻害薬でコントロール不十分な2型糖尿病にたいするGLP-1受容体作動薬追加の有用性

2型糖尿病は、インスリンの効きが悪くなったり、分泌量が少なくなることで、体内でのインスリンの作用が不足し、高血糖となる疾患です。今までに、さまざまな種類の治療薬が開発されており、それらに関する研究も進められています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

糖尿病治療薬〜SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬〜

2型糖尿病の治療薬には、インスリンの抵抗性を改善する薬や、インスリンの分泌を促進する薬、食後血糖を改善する作用をもつ薬などいくつかの種類があり、患者さんに合った薬が選択されます。

SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬は、比較的最近になり開発された糖尿病治療薬です。

SGLT2阻害薬は、近位尿細管に存在し、血中のグルコースを再吸収する働きを担っているSGLT2を阻害することにより、グルコースの再吸収を抑制し、尿糖の排泄を増やすことで、高血糖を改善する薬です。

一方、GLP-1受容体作動薬は、すい臓のβ細胞にあるGLP-1受容体に結合して、血糖値が高いときにだけインスリンの分泌を促し、血糖を下げる薬です。

EMPA-REG OUTCOME試験(被験薬;SGLT2阻害薬エンパグリフロジン)およびLEADER試験(被験薬;GLP-1受容体作動薬リラグルチド)では、標準治療にこれらの薬剤を追加することで、心血管死亡および総死亡のリスクが有意に減少することが示されています。このことを受け、米国糖尿病学会(ADA)では、2017年の標準治療指針(2017 Standards of Medical Care in Diabetes)において、心血管疾患を合併する糖尿病患者さんに対して2剤の使用を考慮することを勧告しています。

また別の研究では、海外では標準治療とされるメトホルミンによる治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者さんに、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の2剤を追加で併用したところ、それぞれの治療薬を単独で追加した群に比べて、HbA1c、体重、収縮期血圧が有意に低下したことなどが報告されています。


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SGLT2阻害薬を服用している患者さんへのGLP-1受容体作動薬追加の有用性

現在でも様々な研究がされているSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬ですが、「Dulaglutide as add-on therapy to SGLT2 inhibitors in patients with inadequately controlled type 2 diabetes (AWARD-10): a 24-week, randomised, double-blind, placebo-controlled trial」では、メトホルミンの有無にかかわらずSGLT2阻害薬で血糖コントロールが不十分な患者さんへのGLP-1受容体作動薬追加の有用性について報告しています。

メトホルミン有無にかかわらず3ヶ月以上のSGLT2阻害薬服用でも血糖コントロールが不十分な18歳以上の2型糖尿病患者さんを対象に、GLP-1受容体作動薬であるデュラグルチド1.5mgを週1回皮下投与する群と0.75mgを週1回投与する群、プラセボ群にわけ、24週にわたりHbA1cの変化を観察しています。

その結果、24週時点でのHbA1cの変化は、プラセボ群で-0.54%であったのに対し、デュラグルチド1.5mg群では-1.34%、0.75mg群では-1.21%と有意な低下がみられました。

有害事象は、デュラグルチドを投与した群で、おもに下痢や嘔吐などの胃腸障害の発生率が高くなり、重篤な有害事象は、デュラグルチド1.5mg群で4%、0.75mg群で2%、プラセボ群で4%の患者さんに発生しました。

このことから、メトホルミンの有無にかかわらずSGLT2阻害薬で血糖コントロールが不十分な患者さんに、GLP-1受容体作動薬(デュラグルチド)を追加投与することにより、コントロールの改善がえられることが示唆されました。


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2型糖尿病は、日本だけではなく世界中で患者数の増加が問題となっています。今後もより効果的で安全性の高い治療にかんする研究がもとめられています。

 

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