うつ病と生活習慣との関係〜日本での大規模調査より〜

うつ病で苦しむ方は、世界で3億人以上にのぼると推定されており、2005年から2015年のあいだで18%も増加したと報告されています。世界中で患者数が増加しているうつ病ですが、近年、うつ病と生活習慣との関係が注目されています。


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うつ病と生活習慣

うつ病は、脳に何らかの機能障害が起こることで発症すると考えられています。症状は、人により異なりますが、抑うつ気分や意欲の低下、思考力の低下などの精神的な症状や、睡眠障害や食欲の低下または増加など身体的な症状がみられます(詳しくはこちらを参照)。

ストレスや環境の変化、疾患などさまざまな要因が重なることで発症すると考えられているうつ病ですが、近年では、食事や運動といった生活習慣や、それに基づく疾患との関連性が指摘されています。

11年間にわたりうつ病や不安障害の発症について追跡調査した大規模な国際調査(The American Journal of Psychiatry より)では、運動を全くする習慣がない群は、週1~2時間の運動をしている群に比べて、うつ病の発症リスクが44%増加したことや、毎週1時間の運動により、うつ病の発症を12%抑制できることが報告されています。

また、肥満とうつ病も関連しているといわれており、肥満やメタボリックシンドロームになると脂肪細胞から炎症性物質が分泌され、このことが発症の一因となっているとの報告もされています。


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日本における大規模調査

近年、生活習慣や肥満、それらに基づく疾患がうつ病の発症リスクと関連することを示唆する研究が増えてきていますが、今回、日本においても大規模な調査が行われ、「Association of depression with body mass index classification, metabolic disease, and lifestyle: a web-based survey involving 11,876 Japanese people」において発表されました。

ウェブ調査に参加した11876人(そのうちうつ病を罹患したことのある人は1000人)を対象に、心理的ストレスレベルやBMI、生活習慣病、食生活、運動習慣などについて調査しています。

その結果、心理的ストレスレベル(K6テスト)のスコアは、うつ病の既往歴のある群(うつ病群)で平均14.1点、うつ病に罹患したことがない群(対照群)で9.8点となり、うつ病群でストレス症状が強いことが確認されました。

BMIで比較すると、うつ病群では対照群に比べてBMI30以上の肥満の割合が有意に高く(オッズ比1.61)、BMI18.5〜25の正常体格の割合は有意に低い(オッズ比0.76)結果となりました。また、BMI18,5未満の痩せ型の割合もうつ病群で多かったことが報告されています。

生活習慣病の罹患率で比較すると、脂質異常症(オッズ比1.53)および糖尿病(オッズ比1.48)に罹患している割合がうつ病群で有意に高くなりましたが、高血圧については関連がみられませんでした。

食生活についてみると、うつ病群では間食や夜食の頻度が高い一方で、朝食の頻度は低い結果となりました。運動習慣では、中等度(オッズ比0.82)または強度運動(オッズ比0.78)をしていると答えた割合は、うつ病群で有意に低くなりました。

このことから、体格や脂質異常症、糖尿病、食習慣、運動習慣はうつ病と関連していることが示唆されました。


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今回の研究結果から、体重のコントロールや食生活の改善、適度な運動、生活習慣病の治療または予防が、うつ病の治療や予防において重要な役割をはたす可能性があることが明らかとなりました。

これを機に、自身の生活習慣についても見直してみましょう。

 

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