2017年3月、シンポニーに新たな適応症が加わり、潰瘍性大腸炎にも使用できるようになりました。
シンポニーは、国内では2011年に承認された生物学的製剤で、関節リウマチに使用されていました。
シンポニーとはそもそもどのような薬なのか
シンポニーはTumor Necrosis α(TNFα)に対する抗体で、TNFαの働きを弱める作用をもっています。
TNFαは腫瘍壊死因子とよばれ、本来はガン細胞を攻撃する役割をもちますが、過剰に分泌されると炎症を引き起こす原因となります。
関節リウマチの患者では、関節でTNFαが多く作られることにより、腫れ、痛みなどの炎症や、関節の破壊が起こることが知られています。
シンポニーはTNFαが関節内で働くのを抑えることで、リウマチを改善します。
TNFαが関係している疾患は関節リウマチだけではない
TNFαが関係している疾患は、関節リウマチだけではありません。潰瘍性大腸炎にも大きく関わっていると言われています。
潰瘍性大腸炎の解説(英語)
潰瘍性大腸炎は、大腸にびらん、潰瘍ができる炎症性疾患です。下痢や腹痛がおもな症状で、時に便に血や粘膜が混ざることもあります。
発症の原因はまだ詳しくわかっていませんが、本来、体内に入った異物を排除する免疫細胞の異常で、大腸内の自身の細胞を攻撃して炎症を起こすことがひとつの原因ではないかと考えられています。
そのため、免疫系の働きを抑える薬や炎症を抑える薬が治療に使われます。
シンポニーが潰瘍性大腸炎の新たな治療薬に
今回、適応症が追加になったシンポニーは炎症反応を抑える薬です。
潰瘍性大腸炎の腸内ではTNFαが大量に作られ、そのことにより慢性的な炎症が起こっていると考えられています。
炎症の引き金となっているTNFαを抑えることで、症状改善・維持に効果をあらわします。
シンポニーの用法、効果
シンポニーは、今までの薬では効果が不十分だった中等症から重症の潰瘍性大腸炎に使用されます。
2回目までは2週間おきに投与し、3回目以降(維持期)は4週間おきに皮下投与します。
写真はイメージです。 photo by MarcoRoosink
臨床試験ではシンポニーを投与した、約半数の患者さんに症状の改善、および改善の維持がみられました。
潰瘍性大腸炎と抗TNFα製剤
潰瘍性大腸炎の適応をもつ抗TNFα製剤は、シンポニーの他にも、レミケードやヒュミラが承認されています。
レミケードは8週間おきの点滴、ヒュミラは2週間おきに皮下投与して使います。シンポニーと投与方法が違うことから、患者さんにとって新たな選択肢のひとつとなります。
抗TNFα製剤は、今までの薬では効果が不十分だった患者さんの症状改善、改善の維持に効果があり、今後さらに潰瘍性大腸炎の患者さんの助けになることが期待されます。
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