クロストリジウム・ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection;CDI)は、おもに入院中にみられる感染症のひとつです。軽度の下痢症状でとどまる場合もありますが、重篤の場合には命に関わることもあり、適切な対処が必要となります。
クロストリジウム・ディフィシル感染症とは
CDIは、芽胞産生性偏性嫌気性細菌であるクロストリジウム・ディフィシルが病原体となり発症します。
免疫力がおちている方に発症しやすく、おもに抗生剤が要因となります。
高齢者や免疫抑制剤の服用、術後などにより免疫力が落ちている患者さんに抗生剤等を投与することにより、消化管の細菌バランスが崩れ、クロストリジウム・ディフィシルが異常増殖し、それらが毒素を生産することで、CDIが発症すると考えられています。
クロストリジウム・ディフィシルが生産するおもな毒素として、A毒素とB毒素が知られており、これらの毒素が腸管内の細胞死や粘膜傷害を引き起こします。
クロストリジウム・ディフィシル photo by wikipedia
症状としては、おもに下痢がみられ、発熱や食欲不振、腹痛などがともなうこともあります。また、消化管に偽膜が形成される、偽膜性大腸炎がみられることもあります。軽症でとどまることもありますが、重症になると腸閉塞・消化管穿孔・敗血症などを起こし、命をおとすこともあるため、適切な治療が必要となります。
症状が発現したら、まず誘因と思われる薬剤の使用を中止します。中止して数日後に症状が改善する場合もありますが、続くようであれば、クロストリジウム・ディフィシルに対して有効なバンコマイシンやメトロニダゾールといった抗生剤の服用が行われることもあります。
クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発を抑える新薬
CDIは一度治癒したようにみえても、再発することが少なくありません。約20%の患者さんで再発がみられるとも言われています。
そうしたCDIの再発を抑える薬として、2017年9月に製造販売承認をうけたのが、「ベズロトクスマブ(商品名;ジーンプラバ)」です。
ベズロトクスマブは、抗クロストリジウム・ディフィシル トキシンBヒトモノクローナル抗体であり、トキシンBに結合し中和することにより、腸管壁の傷害を抑え、CDIの再発を抑制します。
臨床試験では、プラセボ群に比べて、投与後12週間のCDI再発率、持続的治癒率ともに有意差がみとめられています。
CDIの抗生剤治療とあわせて使用し、通常、成人にはベズロトクスマブとして10mg/kgを60分かけて単回点滴静注します。
おもな副作用として、悪心(1.0%)、頭痛(0.8%)、疲労(0.6%)などが報告されています。
写真はイメージです。 photo by photo AC
CDIは、再発率の高い疾患として、患者さんや医療関係者を悩ませてきました。今回、CDI再発抑制薬であるベズロトクスマブが承認されたことにより、今後のCDI治療に効果を発揮することが期待されています。
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