- [冬から春へ-始まりの季節へ]
春というと何が思い浮かびますか。寒い冬が終わって緑が息吹はじめ、桜の花が咲き、冬物から春物へと身に着けるものも変わります。
身も心も軽くなってウキウキするような明るいイメージがある春。春は木の芽が芽吹くことから「木の芽」の季節ともいわれています。始まりの季節というイメージもありますよね。
しかし、ウキウキするイメージなんかしない、気分がのらない、悲しさやさみしさを覚えてしまうなどと感じることはありませんか。それは春のうつ病かもしれません。
[春は変化の季節です]
春はわたしたちの身の回りにいろいろな変化がおきる季節です。この変化がうつ病のきっかけとなることがあります。どのような変化なのかみてみましょう。
-生活の変化-
わたしたちが生活している中に訪れる変化です。いくつか例をあげてみましょう。
・学生では進学、進級、通学のための引っ越しなど ・社会人では新入社、配置移動、昇進、転勤、転職など ・主婦では家族の生活が変わると自分の生活が変わる、子供の独り立ちなど |
ほかにもいろいろあるでしょう。複数の変化が同時に訪れることもあります。また、春はあらたな始まりの季節であると同時に別れの季節です。慣れ親しんできた生活環境が変わることになります。
このような変化は人により程度の差はありますが「ストレス」となって心身に影響を及ぼします。
-季節の変化-
春は季節の変わり目です。朝と夜の温度差が激しく、三寒四温といわれるように日によっても温度差もかなり違います。季節の変化は気がつかないうちにからだへのストレスになります。私たちが体調を崩しやすい季節ともいえます。
体調を崩さないように体のなかでがんばって対応してくれるのが自律神経です。自律神経は血圧や体温などからだのいろいろな機能が正常に働くための司令塔といわれています。自律神経が変化に追いつかなくなると心身の不調という形となって現れてきます。
このような変化が春のうつ病にどのように関連してくるのでしょうか。
[春のうつ病ってなに]
一般的にうつ病はなんらかの要因が引き金となって脳内の神経伝達物質になんらかの問題が起きて発症するといわれています。
脳内の神経伝達物質とはこころやからだのバランスを整えてくれる「セロトニン」、ストレスに反応してからだの集中力や判断力などを高める「ノルアドレナリン」、幸福感や意欲を高める「ドーパミン」などをいいます。とくにセロトニンとうつ病の関係は深いといわれています。
うつ病は通年で発症する可能性がある病気で春に多く、次いで秋から冬にかけて多いことが知られています。
春のうつ病と一般的なうつ病に違いはあるのでしょうか。春のうつ病は春の変化からくるストレスや自律神経の乱れが引き金となります。
うつ病が比較的発症しやすい季節が春であることから「春うつ」とか「春のうつ病」といわれています。春は「うつ病に注意しましょう」という意味でとらえるとわかりやすいでしょう。
うつ病とまでいかなくても春になるとなにか調子が悪くなることやなぜか落ち込むことなど経験したことはないでしょうか。
うつ病になると多彩な症状が出現してきます。どのような症状が現れるのかおもなものをみてみましょう。
―うつ病の症状―
◇こころの症状
・意欲、興味、集中力、やる気などが低下や消失する。 ・楽しみを感じない、気分が落ち込む、ものごとへの関心が薄れる。 ・イライラする、不安感を感じる。 ・遅刻や欠勤をしてしまう。以前できたことができない。学校や会社にいけない。 |
◇からだの症状
・頭痛、胃痛、肩こり、耳鳴り、おなかの調子が悪くなる。 ・動悸、過呼吸、生理不順。 ・寝つきが悪くなる、眠りが浅く目がすぐ覚めてしまう。 ・食欲が落ちるもしくは増加する。飲酒量や喫煙量が増える。 |
これらの症状が複数みられて2週間以上にわたり長引く場合にうつ病を疑います。
自殺者の統計を見てみると1年の中で5月が一番多いことが分かっています。春のうつ病との関連も疑われています。
-五月病とうつ病の違いはなに-
うつ病と同じような症状がみられる「五月病」といわれる病気があります。よく耳にしますよね。五月病は正式な病名ではなく「適応障害」のひとつです。生活環境の変化にうまく適応できないことが原因になります。
五月病とうつ病は大きな違いがあります。五月病の多くは一過性のもので原因を自分でなく周囲に求めるのが特徴です。ゴールデンウィーク明けから6月ごろに発症します。五月病は適応障害なので環境に慣れると自然になおるといわれています。
うつ病の場合には原因を自分に求めてしまいます。自分を責めてしまうことからうつ病が重症化すると自殺につながっていくことが知られています。
たとえば、仕事がうまくいかなくて体調を崩したのは「仕事が自分にあわない」からだと考えるのが五月病、「自分がいけないんだ」と自分を責めてしまうのがうつ病です。注意しておきたいのは五月病がきっかけとなってうつ病に発展してしまうケースもあります。
春になってなにか気分がすぐれない、体調がいつもより悪いなと感じたらどうすればいいのでしょうか。
[なにかおかしいなと感じたら]
自分のからだがなにかおかしいなと感じたときにはからだの調子も戻すためにできることを試してみるのもいいかもしれません。一般的なことですができなくなっていませんか。
リラックスする
お風呂にのんびりはいる、アロマを使用する、好きなことに没頭する、音楽を聴くなど自分がリラックスできることをやってみましょう。ゆっくりと腹式呼吸をするのもリラックスにつながります。
からだをうごかす
散歩やストレッチするなどの軽い運動で構いません。外にでて陽の光を浴びるのがいいといわれています。近所をのんびり散策してみるのがいいかもしれませんね。
睡眠をとる
なかなか眠れないときは眠ろうとするほど眠れなくなっていろいろなことが頭に浮かんできますよね。とはいえ長時間の睡眠をとらなくてはいけないと考える必要はありません。
人間は横になって目を閉じているだけでもある程度の休息効果は得られます。どうしても睡眠に支障が出る場合にはお医者さんに相談しましょう。
食事を楽しむ
かたよった食事や早食いはこころにもからだにもよくありません。いろいろなものをバランスよくゆっくり食べるのが大切です。食事を楽しんでみることも考えてみてください。
できそうなことからをやってみましょう。「〇〇しなくてはならない」のように無理はしないようにします。自分で抱え込まずにほかの人に頼るというのも一つの方法です。
うつ病が進んでしまうとなにもやる気が起こらなってしまいなにをするのもむずかしい状態になってしまいます。
症状が気になる、長引く、つらくてがまんできない、なにもやる気が起きないときには我慢せずに心療内科や精神科を受診しましょう。
なかなか行きづらいと思う方もいるとは思います。学校、会社、自治体ではこころの窓口のようなかたちでカウンセラーを設けているところが数多くあります。最初にカウンセラーの方と話してみるのもいいかもしれません。
お医者さんを受診する場合には心療内科や精神科の多くは予約制です。まずは病院に電話して相談してみましょう。
春のうつ病は春が過ぎれば治るという方もいますがうつ病が改善しないことや悪化してしまうことは少なくありません。そうならないためにも早めの受診をおすすめします。
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