ビタミンDとがんとの関連性〜日本における大規模コホート研究から〜

日本における死亡原因の第一位はがんであり、医療技術が進歩した現在でも、たくさんの方が命を落としています。さまざまな因子ががんの発症に関わっていることが知られていますが、今回、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクとの関連について報告されました。

ビタミンDとは?

ビタミンDは、ビタミンの一種であり、そのなかでも脂溶性ビタミンに分類されます。ビタミンD2からD7の6種類存在しますが、高い生理活性をしめすのは、ビタミンD2とD3です。

ビタミンD2は植物に多く含まれ、D3は動物に多く含まれます。また、ビタミンD3は、食物から摂取する以外にも、皮膚に紫外線があたることによっても生成します。


写真はイメージです。 photo by illust-ac

ビタミンDは、肝臓や腎臓で活性型ビタミンDに代謝されることで、私たちの身体にさまざまな作用を及ぼします。おもな生理作用として、小腸でのカルシウムとリンの吸収を促進させることで、血中濃度を一定に維持し、骨の形成や、神経伝達・筋肉の収縮などを正常に保つ働きをすることが知られています。その作用を利用し、臨床では骨粗鬆症の治療薬としても活躍しています。

また、近年では、免疫調節や細胞増殖の抑制などに関わることや、高血圧や糖尿病、うつ病などさまざまな疾患との関連が報告されており、さまざまな分野への応用が期待されている物質です。

ビタミンDとがんとの関係性

がんの分野でいうと、ビタミンDは、細胞増殖の抑制や細胞死を促進する作用により、がんの抑制に関わっているのではないかと考えられています。

今までの研究から、血中のビタミンD濃度が低いと、大腸がんや乳がん、前立腺がんなどの発症リスクが上昇することや、ビタミンDによりがんの進行・再発・転移の抑制が示唆される結果が報告されています。

日本でも、ビタミンDとがんとの関係を調べる研究がされており、「Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort」では、大規模なコホート研究を行い、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて報告しています。

今回の研究では、採血に協力した40〜69歳の男女約3万4千人を対象に、平均16年間にわたり追跡調査を行い、3734人のがん罹患者を含む約8千人の保存血液(がんに罹患する前の血液)を用いて、血中ビタミンD濃度の測定を行なっています。


写真はイメージです。 photo by pixabay

血中ビタミンD濃度により4つのグループに分け、がん全体やがんの部位別に関連を検討した結果、ビタミンD濃度が2番目に低いグループにおいても、何かしらのがんに罹患するリスクが有意に低下し、2番目に高いグループでもっともリスクの低下が見られました(ハザード比;1番低いグループ1に対して2番目に低いグループ0.81、2番目に高いグループ0.75、もっとも高いグループ0.78)。

1番低いグループを基準に、もっとも高いグループのがんの罹患率を部位別に見ると、ほぼ全ての部位で、ビタミンD濃度が高いことにより罹患リスクが高くなる傾向はみられませんでした。また、血中ビタミンD濃度が高いことにより、特に肝臓がんのリスクが低下(ハザード比0.45)したことが報告されています。一方で、今回の研究では、欧米を中心に報告されている大腸がんのリスク低下は観察されませんでした。このような結果の違いは、偶然による可能性も否定できないものの、人種など他の要因による違いも考えられるとしています。

これらの結果から、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが示唆されました。ただ、血中ビタミンD濃度が最も高いグループでは、がん罹患リスクの更なる低下が見られなかったことから、血中ビタミンD濃度が一定のレベルを超えるとそれ以上のがん予防効果は期待できない可能性もしめされました。


写真はイメージです。 photo by photo AC

今回の大規模コホート研究では、今まで報告されてきた結果と同様に、ビタミンDにはがんを予防する効果があることがしめされました。ビタミンDの摂取は、食事や日光浴が重要になります。日頃から、バランスのよい食事や適度な日光浴を心がけていきましょう。

 

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