開発が進んでいる新たなオレキシン受容体拮抗薬「レンボレキサント」

良質な睡眠は、ヒトの健康に重要となります。しかしながら、日本人の40%前後は睡眠の質に満足していないという調査結果が出ており、約20%は慢性的な不眠に悩んでいるといわれています。


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不眠と睡眠薬

睡眠はヒトの健康を左右しており、睡眠の質とがんなどの疾患との関連も指摘されています。

質の良い睡眠を得るためには、規則正しい生活や適度な運動を心がける、寝る前にスマートフォンやパソコンを見ないようにする、就寝前にリラックスできる環境を作るなど、さまざまな対策が挙げられますが、どうしても寝られない場合には、医療機関で睡眠薬が処方される場合があります。

現在、作用機序や作用時間の異なるさまざまな睡眠薬が発売されており、患者さんの睡眠状況にあった睡眠薬が選択されます。作用機序で分類すると、大きく分けて、脳の活動を抑制する薬と、睡眠に関わる生理物質の働きを調整することで自然な眠りを促す薬に分けられます。

脳の活動を抑制する作用を持つ薬としては、バルビツール酸系やベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系があります。

ベンゾジアゼピン系は、臨床でよく用いられる睡眠薬であり、GABAA受容体に作用し、神経細胞の過分極を引き起こすことで神経活動を抑え、催眠作用をもたらす薬です。催眠作用のほかにも、抗不安や筋弛緩などの作用も持っています。作用時間によって、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分けられ、患者さんの症状により使い分けされます。

非ベンゾジアゼピン系は、ベンゾジアゼピン系と同様の作用をもちますが、より選択的に作用することで、筋弛緩などの作用が弱いことが特徴であり、転倒やふらつきの危険性がたかい高齢者によく用いられます。


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自然な眠りを誘導する作用を持つ薬としては、メラトニン受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬が挙げられます。

メラトニンは、体内時計のリズムを整え、睡眠を促す作用を持つホルモンです。メラトニン受容体作動薬はメラトニンと同じような作用により受容体を刺激し、体内時計を調節することで自然な眠りを促します。

一方で、オレキシンは覚醒状態を維持する際に働く神経伝達物質です。オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンが受容体に結合するのをブロックすることにより過剰な覚醒状態を抑制し、脳を睡眠状態へと移行させます。

開発がすすめられているオレキシン受容体拮抗薬

さまざまな睡眠薬が臨床で使用されていますが、現在開発が進められているのが、新たなオレキシン受容体拮抗薬である「レンボレキサント」です。既存のオレキシン受容体拮抗薬と同様に、オレキシンが受容体に結合するのを競合的に阻害することで、睡眠導入や睡眠維持に働くことが期待されている薬です。

対照薬にゾルピデム徐放性製剤(非ベンゾジアゼピン系)とプラセボを用い、就床から入眠までの時間、および夜間後半部分の中途覚醒時間を含む睡眠維持時間のベースラインからの変化量を検証した海外臨床第Ⅲ相試験では、ゾルピデム徐放性製剤(6.25mg)とプラセボに比べて、レンボレキサント(5mg、10mg)服用群において、有意な改善効果がみられています。また、第Ⅰ相試験では、夜間覚醒時の姿勢安定性において、レンボレキサントがゾルピデム徐放性製剤よりも有意に優れている結果が報告されています。


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睡眠障害の症状は人によって異なり、その人に合った対処法が必要となります。睡眠薬の使用もその一つであり、患者さんに合う薬を選択することが重要です。現在、新たな治療薬も開発されており、さらに選択肢がふえ、より一人ひとりの症状に合った治療薬の選択が可能になることが期待されています。

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