重度乾癬に対するリサンキズマブとウステキヌマブの有効性を比較


photo by Phalinn Ooi  

乾癬は慢性の皮膚角化疾患であり、命に関わることは少ないものの、患者さんの生活の質を低下させることで知られています。

現在日本には約40万人、世界的にみると1億人以上の乾癬患者さんがいると言われていて、特に重度の乾癬に対する新しい治療を心待ちにしている方がたくさんいらっしゃいます。

乾癬とは

乾癬の発症原因は、いまだ詳しく解明されていませんが、免疫系の異常により発症することが有力視されています。

通常であれば外敵から身を守るために働く免疫が、何らかの原因で自分の身体を攻撃し、炎症が生じると考えられています。

炎症には様々なサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)が関与していることが知られており、実際に乾癬患者さんではTNFαやIL-12、IL-17、IL-23が過剰に分泌されていることが報告されています。

乾癬の治療

乾癬の治療は大きく分けて、塗り薬による治療、内服薬による治療、光線療法、生物学的製剤の4つの治療法があります。

基本的には塗り薬により治療を行い、効果が十分ではない場合に内服や光線治療に切り替え、またはこれらを組み合わせて治療を行います。

それでもなお効果が不十分である中等度から重度の乾癬に対しては、新しい薬である生物学的製剤が用いられる場合があります。

乾癬治療の生物学的製剤にはTNFαやIL-12,17,23に対する抗体が使用されています。抗体が炎症の原因となる物質に結合し、働きを阻害することにより効果を発揮します。

リサンキズマブとウステキヌマブ

今回紹介する論文「Risankizumab versus Ustekinumab for Moderate-to-Severe Plaque Psoriasis」では乾癬に対する生物学的製剤であるリサンキズマブとウステキヌマブの有効性を比較しています。


NEJM改変

ウステキヌマブはIL-12とIL-23のp40と呼ばれるサブユニットに結合し働きを抑制します。一方、リサンキズマブはIL-23のp19サブユニットに結合することでIL-23の働きを阻害します。

本論文では、この2剤を中等度から重度の乾癬患者さんに12週間投与し、症状の変化を比較しています。効果の指標は乾癬の面積、重症度指数(PASI)スコアを用いています。

リサンキズマブとウステキヌマブの比較試験

12週投与の結果、リサンキズマブ投与群ではPASIスコアの90%以上の低下が77%の患者さんで認められたのに対し、ウステキヌマブ投与群では40%の患者さんにとどまりました。

また、PASIスコアが100%低下した患者さんの割合をみるとリサンキズマブ投与群では45%、ウステキヌマブ投与群では18%となりました。さらに、持続期間を見ると、リサンキズマブの効果は投与後、約20週間持続しました。

有害事象をみるとリサンキズマブを90mg投与した群では15%程度の患者さんに重篤な有害事象がみられました。しかしリサンキズマブを180mg投与した群では重篤な有害事象はみられませんでした。

これらの結果から、リサンキシマブはウステキヌマブよりも優れた効果をもつことが示唆されました。今後さらなる研究により安全性に関する報告がなされることも望まれています。

医療の進歩により、日々効果的な薬が開発されています。生物学的製剤の誕生により重度の乾癬で悩む患者さんにも有効な治療が出てきました。患者さんの症状改善、生活の質の改善につながることが期待されています。

参照:NEJM(2分程度の動画)

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