新生児薬物離脱症候群に対する舌下ブプレノルフィン投与の有効性


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妊婦が薬を服用した場合、薬が胎盤を通過し、母体だけでなく胎児にも影響を及ぼすことがあるのはよく知られています。一部の薬ではありますが、妊娠中には服用を避けたほうが良い薬もあります。

胎児への薬の影響というと奇形や流産が先にイメージされますが、新生児薬物離脱症候群とよばれる症状も妊娠中の服薬により発症する疾患のひとつです。

新生児薬物離脱症候群とは

離脱症状とは、向精神薬や麻薬、睡眠薬などの薬や嗜好品を中止または減量した際に生じる症状のことをさし、頭痛や嘔吐、不安など様々な症状があらわれます。この症状は急に体内から薬または嗜好品の成分が消失することで引き起こされます。

この状態と同じことが新生児に起こるのが新生児薬物離脱症候群です。

妊娠中に服用した薬または嗜好品は胎盤を通じて胎児の体内にも影響を及ぼしています。しかし、出生後は胎盤からの供給がなくなるため、今まで体内に入っていた薬、嗜好品の成分が一時的になくなります。

このことにより胎児であっても離脱症状が起きしまうのです。ぐったりしている状態やけいれんなど様々な症状が起こります。

早期発見のためにも、まずは出産前から医師と服用薬や嗜好品の情報を共有しておくことが重要と言われています。

新生児薬物症候群を引き起こす薬

新生児薬物離脱症候群を発症する可能性のある薬、嗜好品は睡眠薬や抗てんかん薬、抗うつ薬、アルコール、カフェインなどが挙げられます。

しかし、胎児に影響を及ぼす危険性があるからといって自己判断で持病の治療をやめることは決してしてはいけません。持病の悪化によって胎児に悪影響を及ぼすこともありますので、必ず担当医と相談の上、治療を行ってください。

日本では、新生児薬物離脱症候群が発症した場合、症状に応じてジアゼパムやフェノバルビタールなどを用いた治療が行われます。

新生児薬物離脱症候群治療にブプレノルフィンが有効

日本では麻薬摂取による新生児薬物離脱症候群が起こることはめったにありませんが、欧米では麻薬性新生児薬物離脱症候群の発生報告が多くされています。

麻薬性の症状の場合、非麻薬性新生児薬物離脱症候群とは治療法が異なり、治療としてモルヒネが使用されることがあります。しかしモルヒネを用いた場合、治療期間、入院期間が長いという問題がありました。

そこで2017年5月に発表された論文「Buprenorphine for the Treatment of the Neonatal Abstinence Syndrome」では、新生児薬物離脱症候群治療にブプレノルフィンを用い、治療期間、入院期間に及ぼす影響について報告しています。

モルヒネとブプレノルフィンの比較

オピオイド(麻薬)曝露により新生児薬物離脱症候群を発症した胎児を対象に、舌下ブプレノルフィンまたは経口モルヒネ投与し、治療にかかった期間について解析しています。

その結果、モルヒネ投与群は治療期間が28日かかったのに対し、ブプレノルフィンは15日と有意な期間の短縮がみられました。

入院期間についてみてもモルヒネは33日だったのに対し、ブプレノルフィンは21日という結果になりました。有害事象はどちらの群も同程度みられました。

このことから、舌下ブプレノルフィンを用いて治療を行うことにより、経口モルヒネに比べて治療期間、入院期間が短くなることが示唆されました。

出生後、苦しむ新生児をいち早く助けるためにも、有効な治療法が確立されることが望まれています。

参照:NEJM

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