写真はイメージです。 photo by sima dimitric
[介護サービスの需要が増えています]
日本において、少子高齢化によって高齢化社会が進んでいるのは周知の事実です。高齢な方でも元気で暮らしている方も多くいらっしゃいますが、反面、介護が必要な方も増えています。
介護については、さまざまな介護サービスがあります。大きく在宅(居宅)サービス」と「施設サービス」とに分けられます。
在宅サービス ・訪問介護、訪問入浴介護 ・通所介護(デイサービス) ・短期入所生活介護(ショートステイ) ・訪問介護、訪問リハビリテーション、在宅療養管理指導※ ・通所リハビリテーション(デイケア)※ ・短期入所療養介護(ショートステイ)※ |
施設サービス ・介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設※ ・介護療養型医療施設※ |
厚生労働省が行ったアンケートでは、要介護状態になっても在宅を希望される方は4割超、終末期の療養場所として在宅を希望される方6割超という結果が公表されています。また、国の施策として在宅介護、在宅医療の推進に力を入れています。
介護の怖いところは、家族がいつ介護状態になるかわかりません。また、介護をいつまで続けなくてはならないのか目途が立たない事です。仕事(もしくは家庭)と介護を両立するのも簡単ではなく社会問題にもなっています。
医療従事者を必要とする介護もありますが(上表の※印)、需要が高く、今後も増えると思われる訪問介護サービスについてみています。
[要支援、要介護とは]
よく、要支援、要介護という言葉を聞かれることがありますが、わからない方も多いないでしょうか?。
会社員の方などは、よく、わからず、介護保険料をお給料から天引きされていると思います。
この介護保険とは介護が必要な方の治療や介護などにかかる費用を補償する保険制度です。保険者は社会全体市区町村、被保険者は40歳以上の人の方になります。
要支援、要介護の認定は、市区町村の窓口もしくは地域包括センター(各市町村等各自治体に設置された、高齢者などの暮らしを地域でサポートするための拠点)に申請、認定を受ける必要があります。
申請の対象となるのは、第1号被保険者と第2号被保険者の2種類があります。
第1号被保険者 65歳以上の人すべてです。 |
第2号被保険者 40歳以上65歳未満の国民健康保険や社会保険加入者で、指定されている16種類の疾病に罹患されている方です。指定されている疾患は老化が原因とされる病気(初老期認知症、脳血管障害、関節に障害を及ぼす疾患)や末期がんです。 |
申請が認定されますと、申請者の状態に応じ、以下のように分類されます。
食事・排泄 | 立つ・歩行 | 入浴、身嗜み、衣服の着脱等 | 問題行動 理解の低下 | 備考 | |
要支援1 | ほとんど自分でできる。 | 見守り、手助けが必要な場合あり。 | 見守り、手助けが必要な場合あり。 | なし | |
要支援2 | ほとんど自分で出来るが、介助が必要な場合あり。 | 不安定な場合がある。 | 見守り、手助けが必要な場合あり。 | なし | サービスを受ける事で、状態の維持、改善の期待できる。 |
要介護1 | ほとんど自分で出来るが、介助が必要な場合あり。 | 不安定な場合がある。 | 見守り、手助けが必要な場合あり。 | なし | サービスを受ける事で、状態の維持、改善の期待が厳しい。 |
要介護2 | 何らかの介助が必要な場合がある。 | 身体を支えるために、何らかの道具が必要。 | 何らかの介助が必要。 | 若干の問題が出る場合がある。 | |
要介護3 | 一人ではできない場合がある。 | 一人ではできない。 | 一人ではできない。 | 低下がみられる場合がある。 | ほぼ、全面的な介護が必要。 |
要介護4 | 一人ではできない。 | ほとんどできない | ほとんどできない | いろいろな問題行動や全般的な理解の低下がみられる。 | 介護なしでは日常生活を送ることが困難。 |
要介護5 | ほとんどできない。 | ほとんどできない。 | ほとんどできない。 | 意思の伝達が難しい。 | 介護なしでは日常生活を送ることが不可能。 |
※買い物、家事全般、服薬管理、支払い手続きなどの日常動作について。
要支援1:何らかの支援が必要な時がある。
要支援2:要支援1より、能力が低下してくる(要介護1、要介護2で徐々に低下。)。
要介護3:著しく低下。行うことが、非常に難しい。
介護状態により、以下のように支援内容が異なります。
介護予防訪問介護 | 訪問介護 | 訪問看護 | 施設入所 | 夜間巡回型訪問介護 | デイサービス・デイケア | 福祉用具貸与 | |
要支援1 | 週1回 | 短期で月2回 | |||||
要支援2 | 週2回 | 短期で月2回 | 一部あり | ||||
要介護1 | 週3回 | 週1回 | 3ヵ月に1週間 | 週2回 | 一部あり | ||
要介護2 | 週3回 | 週1回 | 3ヵ月に1週間 | 週2回 | 一部あり | ||
要介護3 | 週2回 | 週1回 | 2ヵ月に1週間 | 毎日1回 | 週3回 | あり | |
要介護4 | 週6回 | 週2回 | 2ヵ月に1週間 | 毎日1回 | 週1回 | あり | |
要介護5 | 週5回 | 週2回 | 1ヵ月に1週間の短期入所 | 毎日 早朝、夜間2回 | 週1回 | あり |
※支援内容は標準的なものです。市区町村によって異なります。
※この介護予防訪問介護は、2018年3月までの間に、段階的に市区町村によって行われる「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行されます。従って、介護保険サービスの対象ではなくなります。
※訪問介護サービスと介護予防訪問介護サービスの違いは目的にあります。訪問介護は要介護者の世話、介護予防訪問介護は要支援者の世話ではなく支援、出来る限り、利用者自身で行うことが重視されています。サービスの内容は同じですが、本人が自力で家事を行うこと難しいなど条件が限定されています。
[訪問介護サービスを受けるには]
訪問介護サービスは、訪問介護事業所の介護福祉士やホームヘルパーが、利用者の自宅で、日常生活のサポートをしてくれるサービスの事です。
訪問介護サービスを利用するまでの流れは、以下のようになります。
1.要介護に認定受けたら、まずは、担当ケアマネジャーを決め、ケアプランの作成の依頼、介護について相談します。
ケアマネジャー 各都道府県で管轄している介護支援専門員実務研修受講試験(受験資格あり)に合格し、所定の研修で取得出来る資格を持った人です。ケアマネージャーは、要介護認定業務、ケアプランの作成、管理を主に行います。ケアマネージャーは居宅介護支援事業所、介護保険施設、介護療養型医療施設などに所属しています。 |
2.市区町村の窓口、地域包括支援センター、病院の地域連携室などで居宅介護支援事業所の居宅介護支援事業所のリストから、電話、面談など、複数の候補の絞って、納得できるケアマネージャーを選びます。
3.担当となったケアマネジャーと相談し、まずは、現状を把握してもらいます。
4.ケアマネジャーは、現状に即した形でケアプランの原案を作成します。
5.原案のケアプランの説明を受け、同意すれば、正式にケアプランが作成されます
6.ケアプランが完成したら、直接サービス事業者と契約して、訪問介護サービスの利用を開始します。
7.ケアプランは、月に1回以上、ケアマネジャーの訪問などから、達成上の確認が行われ、必要に応じて修正します。
※ケアプランを介護者本人、介護家族が作成することも可能です(セルフケアプラン)。ただし、プラン作成の手間、専門的知識の必要性、作成した人の負担や責任の重さなどから、現状では、ケアマネジャーに依頼するケースがほとんどです。
※訪問介護サービスを要介護の認定を受ける前に暫定ケアプランを作成して受けることもできます。ただし、要介護の認定が下りなかった全額自己負担になります。
介護に必要な費用については、介護保険法令に定める介護給付費(介護報酬)に基本的な料金が定められています。ただし、時間帯や市区町村、訪問介護事業所により異なります。
自己負担額は介護保険ですので、基本料金に対して1割か2割(一定以上の所得がある第1号被保険者、第2号被保険者)となります。範囲外のサービスを受けた場合や給付限度額(介護等級により異なります)を超過した場合には、すべて、自己負担になります。
[訪問看護サービスの内容は]
訪問介護サービスは、住み慣れた環境でサービスを受けられるので、利用者にとって安心感が強く、また、利用者の環境に合った介護方法受けることができます。施設に入所するよりも、費用的な負担も軽くなります。しかし、利用者が、知らない人の家庭内に入ってくることを拒むこともあり、利用するには、時間をかけることが必要な場合があります。
訪問介護サービスでは、どのようなサービスを受けることが出来るでしょうか。大きく分けて、「身体介護」と「生活援助」となります。
注意したいのは、訪問介護サービスは、介護者本人の日常生活に、直接かかわる必要なことのみに限定されます。家政婦でも家事代行サービスではありません。何でも、頼めるわけではありません。
従って、介護者の家族に関わることはサービスの対象外です。介護者本人に関わることでも、日常生活に関わりないことは頼むことは出来ません。
身体介護:介護者の体に直接触れて行われるサービスです ・食事の手伝いや見守り ・入浴風呂の手助けや洗髪、身体の清拭 ・車椅子や車への乗り降りなどの手伝い ・おむつ交換 ・褥瘡予防や防止のために体位変換 ・着替えの手伝い ・散歩の補助(歩行が不自由な場合) ・体温測定、血圧測定、軽微な傷の治療 ・口腔ケア、耳掃除 ・たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)、経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)のケア(※指定研修および実地研修を受けたヘルパーのみ可能) |
生活援助:一人暮らしの介護者、もしく本人または家族が何らかの理由により介護者に関わる家事を行うことが出来ない場合に、日常生活をサポートするサービスです。 ・調理・配膳などの食事の準備 ・シーツ交換、布団干し ・服の補修 ・部屋の片づけ、ゴミ出し、 ・洗濯 ・日用品(必需品)などの買い物代行 ・病院での薬の受け取り |
日常生活に関わりない頼めないことの例 ・大がかりな大掃除 ・手間のかかる特別な料理 ・庭の手入れ ・ペットの世話、散歩 ・話し相手 |
頼めることと頼めないことの区別は、市区町村、訪問介護事業所によっても異なります。また。市区町村ごとのローカルルールまであります。ケアプランを作成する時、特に、訪問介護事業所と契約を結ぶ時に、十分に確認、注意をすることが、大切になってきます。
事情によって、イレギュラーなサービスを依頼した場合には、ケア・マネージャーに相談することができます。緊急性、必要性を踏まえて、対応が認められることもあります。また、多くの訪問介護事業所は、保険外サービスのメニュー(保険適用外)も提供しています。
[訪問介護サービスのトラブル]
自宅で家族の介護をする方にとって、訪問介護サービスは非常に便利なサービスですが、実際に、接するのは、ヘルパーと利用者です。しかし、お互いに、人間ですので、やり方や考え方が異なり、不満や不安に繋がっていきます。また、サービスとして頼めない仕事受けてもらえないなどが原因でトラブルが発生することが多いと言われています。
一方、ヘルパーの仕事は介護保険の制度という国の公的社会保障制度の元に成り立っています。公務員に準じる「中立・公平」な立場が常時求められています。どの利用者にも「中立・公平」が求められます(「中立・公平」という観点から、ヘルパーの指名をすることもできません)。
利用者からすればヘルパーの資質と言えば、それまでになってしまいますが、その逆、つまり、利用者側の意識の持ち方も原因となると言えるのではないでしょうか。
その為には、ヘルパーと利用者との間に信頼関係を築くことが、大変、大事なことになります。信頼関係を築くためにも、ヘルパーにはヘルパー作業を機械的に行う事のないように、利用者はヘルパーが家政婦や家事代行サービスではないと意識し、お互いに接していくことが大事でしょう。
[訪問介護サービスが抱える問題]
訪問介護サービスへの関心、需要、ニーズは着実に増えています。介護サービスを利用したい人が増えているにも関わらず、ヘルパー不足の深刻に悩まされている事業所が多数存在しています。また、人手不足により、閉鎖に追い込まれた事業所も存在しています。
介護職は、いろいろな種類がありますが、特に、ヘルパーが不足している原因は、一言で言えば、定着率の悪さにあります。なぜ、定着率が悪いのでしょうか?。
・労働に見合わない低賃金 ・人間関係でトラブルに会いがち ・労働時間が不安定であり、労働もきつい、休暇が取り難い ・社会的評価が低い ・将来性が不安 |
また、事業者側も決して、楽な経営と言うわけではありません。
・ネガティブなイメージのために採用が難しい ・今の介護報酬では人材確保・定着のための資金の確保できない ・経営が苦しく、労働環境の改善ができない ・教育・研修の時間が十分に取れない ・社会的評価が低く、良質な人材の確保が難しい |
訪問介護サービスが悪循環に陥っていることがわかります。
このような状況や今後の高齢化社会の加速を鑑み、国の方針として、いろいろな施策を進める予定です。
・介護サービスを必要とする人の増加、拡大する介護給付や医療給付の抑制のための法改正の実施 ・パッケージ型サービス(訪問介護、通所介護等)への移行 ・生活援助を中心とした新しいサービスの導入と育成 ・現在の国の方針である入院で医療行為が必要な重度の人を在宅に戻す方針に基づき、介護職に医療行為を認めることを制度化 ・医療行為研修を受けさせ、医療行為ができる職員を増加 ・介護職を他職種と連携させ役割分担 ・介護施設・事業所内の保育施設(子供いる方対応)を新規開設・整備支援 ・優良な職場づくりに向けた取り組みの普及 ・介護人材のキャリアアップを図るための支援、助成 |
[訪問介護サービス以外の訪問サービス]
訪問介護サービス以外にも、自宅を訪れて、訪問介護を行うサービスがいくつかありますので、簡単に紹介します。
訪問入浴介護サービス
専門の介護スタッフが専用の浴槽を持って、介護者宅を訪問して入浴の手伝いをします。要介護者を自宅の浴槽が狭く入浴が難しい、どのように入浴させたらいいかわからない、寝たきりなので入浴させることが出来ない時に利用されます。
訪問看護サービス
看護師が介護者宅を訪問し、診療補助業務を行います。要介護者の症状や状態によって対応内容は異なります。健康状態の観察(血圧、体温、呼吸、脈拍の測定や状態の観察)、病気の治療のための看護(点滴、注射などの医療処置、床ずれの予防と処置、カテーテル、在宅酸素などの医療機器の管理など)、療養上の相談、助言を行います。
訪問リハビリテーションサービス
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅を訪問し、日常動作(食事、着替え、トイレ、家の中での歩行)、身体機能(筋肉をつけるための運動、関節の硬化を防ぐ運動)のリハビリテーションや介護者への介助方法の指導を行います。
[訪問介護サービスを上手に利用しましょう]
訪問介護サービスを需要は、今後、ますます、増えていくでしょう。自分を含めて家族が、何時、訪問介護サービスのお世話になるかわかりません。また、介護を自力で、すべてこなすのは大変な負担になり、介護が原因で悲しい事件が起きてしまうこともあります。
訪問介護サービスは、介護する側の負担は軽減され、介護される方も自宅でサービスを受けられるメリットは大きいでしょう。その為にも、介護サービスを上手に利用することが大事になります。それには、ケアマネジャー、訪問介護事業所を慎重に選び、ケアマネジャー、ヘルパーに任せ切りではなく、充分なコミュニケーションを取るのが大事ではないでしょうか。
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