救急搬送時、患者が突発的に嘔吐や吐血をすることがあります。
もし嘔吐や吐血に対処できなかった場合、救急車の機材の清掃が全て完了するまでその車両は使用が中止され、救急活動が一時的に滞ることになります。
また、感染症に感染している患者が嘔吐や吐血をした場合は、救助活動に当たっている隊員に感染する可能性も出てきます。
このような救急搬送時の突発的な嘔吐に対応するため、金沢市の救急隊員が瞬間開口式嘔吐処理袋を開発しました。
瞬間開口式嘔吐処理袋とは
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現在救急搬送時に使用されている嘔吐への対応方法は、のう盆とポリ袋の二点です。
それぞれ軽くて持ち運びに便利な点はありますが、のう盆ならば吐物を受ける際にこぼれる心配、ポリ袋なら袋が破れる心配等様々な問題点があり、いずれも瞬時の対応に完璧な道具であるとは言い難いところがあります。
このような瞬時の嘔吐に対応するため、金沢市消防局の田中岳大さんが突発的な嘔吐に対応できる瞬間開口式嘔吐処理袋を開発しました。
この瞬間開口式嘔吐処理袋は、本体が防水ナイロンでできており縫い目は止水用ボンドでコーティングされているため、水分に対し非常に丈夫な作りになっています。
また、袋の開口部には形状記憶ワイヤーが入っているため、持ち運び時には13cm程度の大きさですが使用時にポケットから取り出すと0.5秒で袋が開口できます。
袋の中部についているゴム紐とストッパーにより、一度閉じた袋を再度開閉することも可能です。
広げた時の大きさは開口部26㎝、縦29cm、横32cm、奥行き20㎝のため容量が多く、全体がグレーの生地でできているため吐物をドクターに確認してもらう際に色が障害になりません。
中にポリ袋を装着し、吐物を受けたらポリ袋のみを交換することで再度使用可能なため、迅速な対応が可能になっています。
実用化に向けての課題
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開発した田中岳大さんは、自動車のサンシェードを見て瞬間的に広がる仕組みのヒントを得て、趣味の山登りから防水性の高い素材を閃いたと語っています。
このような画期的な瞬間開口式嘔吐処理袋ですが、開発費用はなんとたったの750円ということも驚きます。
金沢市消防局では瞬間的嘔吐処理袋を製品化するために研究を重ねていますが、本体に装着するポリ袋を固定するための固定具をもっと簡単に装着できるようにし、さらに外れにくくする必要があるということで課題も残っています。
瞬間的嘔吐処理袋が実現化されれば、傷病者本人、救急隊員、救急車内に対し汚染や感染防止の高い効果を発揮するだけでなく、周囲への飛散を恐れて嘔吐することをためらう傷病者のストレス緩和にもつながることでしょう。
開発者の田中岳大さんは「今回の開発が実際の救急現場に広く普及して、より適切な救急業務の推進に貢献できることを期待する」と話しています。
実現化に向けて研究が重ねられ、広く救急の現場に広まることを開発者本人も期待しています。
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