「Shared decision making」又はSDMという言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
長い間、治療は専門である医師の判断を信頼して行われていました。その後、登場したのがセカンドオピニオンです。今までの医師が決める治療ではなく、患者さん自身が受ける医療を選ぶ権利を保証しています。
診断、治療方法を自分で選択していくシステムですが、実際に実践するには双方の関係性などを考慮して、本当にセカンドオピニオンをしたいすべての患者さんが行うまでには至っていません。
そしてあらたにいま注目されているのが「Shared decision making(SDM)」で、医師と患者さんの双方で治療方針を決定していくきます。
SDMには、単に病気の治療法の選択だけではなく、治療を受ける患者さんの意思や嗜好を尊重しながら方針をきめていくのが大きな特徴となっています。
治療、リスクを共に共有することが大事
SDMには、患者さん自身が対面している病気への医療的知識の理解と、医師が患者さんにそのリスクをわかりやすく伝えることが必要です。
たとえば、手術をしたほうがいい病気を患った場合に、患者さんが、望む治療方法が必ずしも手術とは限りません。
患者さんの年齢、治療に対する考え方はそれこそ千差万別でしょう。
今までのように治療方針の判断を全て医師に任せ、後で後悔するといった治療では不満も生まれます。いっぽうで、患者さんが全て決定する治療は、医療知識がないばかりに行えたはずの治療の可能性を失うリスクもあります。
満足感も訴訟もコミュニケーションで変わる
写真はイメージです。 photo by Ilmicrofono Oggiono
2004年に日本で行われた、医療不審に対する背景を調べた論文では、「医師と患者のあいだの心理学的、医学的な信頼の研究」が調査されています。
患者さんには、自分の選んだ医師の治療を信じたい気持ちがありるものの、医療知識の少ない患者さんにとって医師の説明不足、尋ねてもきちんと教えてもらえないミスコミュニケーションが、不審につながっています。
2014年にAmerican Heart Associationに発表された研究では、SDMに重要なことは、医師のコミュニケーション力であり、患者さんに、治療におけるリスクを理解させるために、わかりやすい図表などを使った統計情報の提示が必要であるとしています。
また、医師と患者さんだけではなく、その周囲の関係者にも協力を求めることが必要です。この研究では、治療にSDMをもちいることで、患者さんの病気への懸念が少なくなり、治療に対する高い満足度が示されました。
医療訴訟が頻発している背景を考えても、医師、患者さん双方が満足し、またリスクを回避するには十分なコミュニケーションがとることが大切であると言えるでしょう。
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