ナイアシン摂取により先天異常、流産のリスクが減少?!

妊娠・出産は喜ばしいことであり、だれもが無事に元気な赤ちゃんを産みたいと願います。しかし、医療が進歩した現代でも、先天異常をもって産まれる赤ちゃんは全体の約5%存在するといわれています。また、流産も、妊婦さんの約15%が経験すると報告されています。

先天異常や流産は、染色体の異常や環境要因など、さまざまな原因により起こると考えられていますが、多くはいまだ原因が解明されておらず、原因の究明が進められています。


写真はイメージです。 photo by photoAC

先天異常の原因は?

先天異常は、生まれながらにして持つ、形態的、機能的の異常をさします。遺伝性の先天異常は15~20%、染色体性は5~6%、外的因子は5~6%を占め、60~70%は原因不明と言われています。また、胎児に先天異常が発現すると、自然淘汰され、生まれる前に流産する場合もあります。

神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するために葉酸を摂取するなどの効果的な対処法も推奨されていますが、先天異常、流産の原因はいまだ不明なことが多く、さらなる原因の究明と対処法の確立が求められています。

先天異常、流産の一因とナイアシンの効果

そこで、「NAD Deficiency, Congenital Malformations, and Niacin Supplementation」では、いくつかの先天異常をもつ患者さんのいる家族を対象に遺伝子を解析し、先天異常を引き起こす可能性のある遺伝子多様体の同定を行っています。特に、心臓、脊椎、腎異常の遺伝的要因を検討しています。

解析の結果、キヌレニン経路の酵素である 3-ヒドロキシアントラニル酸-3,4-ジオキシゲナーゼ(HAAO)とキヌレニナーゼ(KYNU)をコードする 2つの 遺伝子で多様体が同定されました。キヌレニン経路はアミノ酸の一種であるトリプトファンをナイアシン(ビタミンB3)の活性型であるNADへ変換する際に関与する経路です。

対象のうち、3例にHAAOタンパクまたはKYNUタンパクの機能喪失が予測されるホモ接合性多様体がみられました。また他の1例にヘテロ接合性KYNU多様体がみとめられました。これらの変異酵素の活性をみると、著しい低下がみられ(in vitro)、患者さんの体内NAD濃度の低下もみられました。

HaaoあるいはKynuを欠損させたマウスでは、流産や胎児に多用な先天異常がみられました。しかし、その症状は、ナイアシンを摂取させることにより、みられなくなりました。

このことから、キヌレニン経路の遺伝子異常が、流産や多様な先天異常の一因となることが示唆されました。また、そのリスクはナイアシンの摂取により減少する可能性が報告されました。


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今回の報告により、NADを生成する経路に遺伝子異常があると流産や先天異常のリスクが高まるものの、ナイアシンの摂取によりそれらのリスクを減らせる可能性があることがしめされました。今後、該当する女性を特定する方法の確立や、人での適切なナイアシン摂取量の設定など、さらなる報告が期待されます。

 

 

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