好酸球型COPDに対するメポリズマブの有効性

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)は、喫煙などが原因となり発症する肺の炎症性疾患です。530万人以上の患者さんがいると推定されていますが、実際に治療に取り組んでいるかたは、1割にも満たないと言われています。COPDは男性の死亡原因の8位となっており、命を落とさないためにも早期に発見し、適切に治療を行うことが大切です。

COPDとは

COPDは、長期間の喫煙が主な原因となり肺に炎症が起こる、肺の生活習慣病です。喫煙者の15~20%がCOPDを発症するといわれています。

有害な物質を長期間吸入すると、肺の細い気管支に炎症が生じ、内側が細くなることで、空気の流れが悪くなります。また、有害物質が肺胞まで到達し、炎症を起こすと、肺胞壁が壊れ、弾力がなくなり、酸素と二酸化炭素を交換する機能の低下をひきおこします。


健常者の肺胞(左)とCOPD患者の肺胞(右)の比較図。
肺胞壁の破壊による肺胞自体の減少などが見て取れる photo by wikipedia

身体を動かしたときに息切れを感じる労作時呼吸困難や、慢性の咳、痰がおもな症状であり、喘鳴や発作性呼吸困難など喘息のような症状をともなう場合もあります。

一度変化を起こしてしまった肺は、元に戻ることはありませんが、適切な治療により、症状の緩和や進行を抑制することは可能となっています。

COPD治療では、①症状およびQOLの改善、②運動能力や身体能力の向上または維持、③増悪の予防、④疾患の進行抑制、⑤全身併存症や肺合併症の予防、⑥生命予後の改善が管理目標となっており、症状や進行度などをみて患者さんに合った治療法が選択されます。

治療は、禁煙が基本となり、あわせて呼吸リハビリテーションや薬物治療などが行われます。進行している場合には、在宅酸素療法や、換気補助療法、手術が行われる場合もあります。

COPDに対する薬物治療では、気管支を拡張する作用をもつ抗コリン薬やβ2刺激薬、テオフィリン製剤がおもに用いられ、とくに長時間作用する吸入型の抗コリン薬やβ2刺激薬がよく使われています。また、増悪を繰り返す場合には、吸入ステロイド薬が用いられることもあります。


写真はイメージです。 photo by illust AC

好酸球型COPDに対するメポリズマブの効果

COPDの炎症には、好中球がおもに関与することがしられていますが、中には好酸球の増加がみられる患者さんもいます。そこで、「Mepolizumab for Eosinophilic Chronic Obstructive Pulmonary Disease」では、好酸球数の多いCOPD患者さんに対する抗インターロイキン5(IL-5)モノクローナル抗体メポリズマブの効果を報告しています。

メポリズマブは、IL-5に特異的に結合し、IL-5の好酸球増殖作用を抑制する効果がみとめられており、日本では、気管支喘息に適応が承認されています。

今回の研究では、2 件の第 3 相試験(METREX 試験、METREO 試験)において,吸入ステロイドベースの 3 剤併用維持療法中に中等度または重度の増悪をきたした患者さんを対象に、メポリズマブまたはプラセボの投与を行い、有効性と安全性について検討しています。

METREX試験では、メポリズマブ100mgまたはプラセボを4週間ごと、52週間にわたり投与を行い、好酸球数が150個/μL以上の好酸球型のCOPD患者さんと150個未満の非好酸球型の患者さんを比較しています。METREO試験では、好酸球型COPD患者さんを対象に、メポリズマブの用量を変えて比較をおこなっています(メポリズマブ100mgまたは300mg、プラセボ)。

その結果、METREX試験において、好酸球型COPD患者さんの中等度~重度の増悪平均年間発生数は、メポリズマブ投与群で1.40回/年であったのに対し、プラセボ群では1.71回/年となりました。しかし、非好酸球型患者さんを含めた全体の比較では、メポリズマブ投与群とプラセボ群で有意な差はみられませんでした。

METREO試験での好酸球型COPD患者さんの中等度~重度の増悪平均年間発生数は、メポリズマブ100mg投与群で1.19回/年、300mg投与群で1.27回/年、プラセボ群で1.49回/年となり、プラセボ群に対する増悪の率比は、メポリズマブ100mg投与群で0.80、300mg群では0.86となりました。

スクリーニング時の好酸球数がより多かった患者さんでは、年間増悪発生率にたいするメポリズマブの効果が大きくなる傾向がみられました。メポリズマブの安全性プロファイルはプラセボと同等でした。

このことから、好酸球気道炎症がCOPD増悪の一因となることが示唆されました。また、好酸球型COPD患者さんにメポリズマブを投与することにより、中等度から重度の増悪回数を減らせる可能性がしめされました。


写真はイメージです。 photo by illust AC

COPDは、肺の炎症により息を上手く吐き出すことができなくなり、進行すると命を落とすこともある疾患です。現在の治療法では、根本的にCOPDを治すことはできませんが、症状を緩和し、進行を抑制することは可能であるため、早い段階で発見し、病態にあった治療を継続して行うことが大切です。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました