ダニ媒介性感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

ダニが媒介する感染症としてツツガムシ病がありますが、厚生労働省が定めた1-5類感染症の中にはツツガムシ病を含めいくつかのダニ媒介性感染症が含まれています。

今回はその中の一つの重症熱性血小板減少症候群(Sever Fever with Thrombocytopenia Syndrome; 略してSFTS)をご紹介したいと思います。この疾患は2017年10月に、徳島県において世界で初めてペットから人への感染が成立した病気として耳にした方も多いかと思います。

写真はイメージです。 photo by photo AC


実際には、感染症法に指定されている疾患以外にも多くのダニ媒介性感染症があり、人畜共通感染症と言う観点から見ると、いかにダニが病原体を媒介するのに重要な役割を果たしているかがよくわかります。

SFTSとは?


この疾病は、2009年に中国で原因不明の疾病として扱われた病気で、2011年にウイルス性疾患であることが同定された比較的新しい病気です。

ウイルスはブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるSFTSウイルスであり、名前の通り1-2週間の潜伏期間の後、高熱、消化器症状、神経症状と共に白血球および血小板数の減少が認められるのが特徴的です。

血小板減少により皮下出血や下血などの出血症状も見られ、感染後の死亡率は10-30%程と言われています。

現在までに有効なワクチンや治療法は知られておらず、対処療法がほとんどです。

SFTSの疫学


世界的に見るとSFTSが流行しているのは中国、韓国、日本のみと言われていますが、近年アメリカでも類似のウイルスが発見されています。

中国ではSFTSウイルスを保持するフタトゲチマダニやオウシマダニが感染源とされており、日本でも多くの感染源はウイルスを保持しているマダニ類だと考えられています。

日本における現在(2017年9月)までの患者数は303人、男女差はなく、5-8月の発症が多いとされています。2014-2017年の年間平均患者数は60-70人ほどで、そのうち10人前後が亡くなっています。

発生の多くは西日本を中心としていますが、全国のマダニからSFTSウイルスが検出されているため、全国どこでも発生の可能性がある病気です。

マダニ photo by photo AC


また、マダニに噛まれたヤギ、ウシなどの家畜やネコ、イヌなどのペットからもSFTSウイルスが検出されており、2017年7月にはネコに噛まれた女性が、10月にはイヌに噛まれた男性の感染が確認されているため、マダニ以外の感染経路もありうると考えられています。

SFTSの予防


マダニの咬傷を避けることは有効だと考えられます。また、最近ではペットからの感染事例も報じられているため、ペットに対するダニの駆虫薬の使用も効果的な予防法の一つになりうるかもしれません。

最後に


今回はダニ媒介性感染症の中でも比較的新しい病気をご紹介しました。この病気についてはまだ知られていないことも多いですが、ダニに噛まれた際に罹患しうる病気の一つとして心に止めておくと良いかもしれません。

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