抗菌薬が効かなくなってしまう「バイオフィルム」~菌によって形成される厄介な構造体

バイオフィルムって聞いたことありますか?

自然界のあちこちに存在しているのですが、
我々の生活でもとっても身近なものなんです。

そんな非常にありふれているバイオフィルムですが、
実は医療現場では無視出来ない存在です。

というのも、このバイオフィルムがあると、
なんと菌に対する薬が効きにくくなってしまうんです!

今回は、
そんな厄介なバイオフィルムについて紹介していきます。

細菌
写真はイメージです。 photo by photo AC

【バイオフィルムって何?】

まずはバイオフィルムについて見てみましょう。

バイオフィルムとは、
細菌が集まり互いにくっ付きあって出来る
3次元構造をとった構造体です。

バイオフィルム内では、同じ種類の菌だけでなく
別の種類の菌が存在していることもあり、
互いに情報伝達までしていると考えられています。

ちょっとした細菌のコミュニティが形成されているんですね。

この細菌のコミュニティはゼリー状のマトリクスに覆われており
内部の細菌集団を保護しているような状態になっています。

【何が問題となるの?】

では、このバイオフィルム、
一体何が問題となるのでしょうか?

実は細菌集団を保護しているバイオフィルムがあると、
体の免疫機能が体内に侵入した菌の塊をスルーしたり
抗菌薬が効きにくくなってしまったり
します。

そうすると何が起こるかというと、
慢性感染症を引き起こしてしまうのです。

慢性感染症とは、
発病後の症状の現われ方がゆっくりしていて、
更に経過もゆっくりな感染症の事です。
代表的な物は、結核や梅毒です。

普通なら抗菌薬ですぐに治る感染症でも、
このバイオフィルムの影響で薬が効きにくくなり、
治療が困難になってしまうのです。

バイオフィルムは、自然界ならどこにでも存在します。
身近な所では、口腔内や水回りのぬめりです。

口腔内では
う蝕歯周病がバイオフィルム感染症です。

医療現場では
カテーテル内や人工関節などの体内に埋め込むタイプの
装具なんかにも形成されてしまいます。

カテーテル
写真はイメージです。 photo by photo AC

どこにでも出来るくせに薬剤で対処することが難しいので、
治療しようにもアプローチが難しくとても厄介ですよね。

【バイオフィルムを壊すには?】

では、この厄介なバイオフィルム、
破壊する方法はあるのでしょうか。

実は、明確な方法はまだ研究途中です。

というのも、バイオフィルムの成分は菌によって微妙に
異なっているため、一つの方法では太刀打ちできないのです。

この微妙な違いを解析することで、
有効な手立てを複数組み合わせれば、
いずれこの菌の城を攻略できると考えられています。

【まとめ】

今回はバイオフィルムについて紹介しました。

がん等の疾患とは違って、目立った存在ではありませんが
軽視することのできないバイオフィルムとその関連感染症。

研究
写真はイメージです。 photo by pixaboy

今は完全に排除することが難しい対象ですが、
基礎医学研究によって情報を蓄積することが
今後の更なる治療・予防へのカギとなりそうですね。

 

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