非転移性去勢抵抗性前立腺がんにたいするアパルタミドの効果

前立腺がんは男性特有のがんであり、患者数は8万人以上にのぼると推定されています。ゆっくりと進行し、症状の出ないまま人生を全うする方もいますが、なかには治療を行なっているにもかかわらず、がんが進行する去勢抵抗性前立腺がんになる患者さんもいます。


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去勢抵抗性前立腺がんとは

去勢抵抗性前立腺がんは、「男性ホルモンの分泌を抑える治療(ホルモン療法や手術)が行われていて、血液中の男性ホルモンの濃度も非常に低いにもかかわらず、がんが進行したり、腫瘍マーカーのPSAの値が上昇している状態」と定義されています。

前立腺がんは、男性ホルモン(アンドロゲン)の刺激を受けて増殖する性質をもつため、治療では、男性ホルモンの分泌や働きを抑えるホルモン療法が高い効果を発揮します。

しかし、ホルモン療法の効果はずっと続くわけではなく、服用期間が長くなるにつれ、だんだんと効果がみられなくなっていくことがあります。

初回ホルモン療法の持続期間は平均3年ともいわれています。効果がなくなってくると、男性ホルモンが低く保たれているにもかかわらず、PSAの上昇やがんの増殖がみられ、がんが進行していきます。

前立腺がんは、進行すると骨に転移しやすいことが知られており、去勢抵抗性前立腺がんでは、約80%の頻度で骨転移がおこるといわれています。また、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの5年相対生存率は約30%と報告されています。

そのためなるべく早期から適切な治療を行い、病気の進行を遅らせたり、症状を抑えることが大切です。


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去勢抵抗性前立腺がんの治療と現在開発中の薬

去勢抵抗性前立腺がんの治療では、アンドロゲンをさらに強力に抑える作用をもつエンザルタミドやアビラテロンが用いられることが多く、そのほか、ドセタキセルなどの抗がん剤を用いた治療が行われることもあります。

最近になり、治療の選択肢が広がってきた去勢抵抗性前立腺がんですが、新たに開発がすすめられているのが、経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬である「アパルタミド」です。

アパルタミドは、アンドロゲンが受容体に結合するのを阻害するほか、アンドロゲン受容体ががん細胞内に移行するのを止める、アンドロゲン受容体ががん細胞のDNAに結合するのを阻害する作用を有しており、がんの増殖を抑制する効果を発揮します。

臨床試験(SPARTAN試験)では、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さん1207名を対象に、アンドロゲン除去療法+アパルタミド投与群とアンドロゲン除去療法+プラセボ群を2:1になるようにわけ、無転移生存期間や転移までの期間、無増悪生存期間、症状増悪までの期間について検討しています。

その結果、無転移生存期間の中央値は、アパルタミド投与群で40.5ヶ月であったのに対し、プラセボ群では16.2ヶ月となり、アパルタミドを投与することで、転移および死亡のリスクが72%減少することがしめされました。

転移までの期間の中央値は、アパルタミド群で40.5ヶ月、プラセボ群で16.6ヶ月となり、無増悪生存期間においてもアパルタミド群で40.5ヶ月、プラセボ群で14.7ヶ月と有意な延長がみとめられています。全生存期間にかんする中間解析では、アパルタミド群で死亡リスクが30%減少したことが報告されています。

有害事象は、おもに皮疹(5.2%)、転倒(1.7%)、骨折(2.7%)が発現し、重篤な有害事象の発現率はアパルタミド群とプラセボ群で同等となっています。


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今回、アパルタミドにより、非転移性去勢抵抗性前立腺がんの無転移生存期間の延長など、良好な転帰がえられる可能性が示唆されました。今後、非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療に貢献することが期待されています。

 

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