大豆イソフラボンを少量摂取することで老化に伴う筋力低下を軽減か-高齢化社会を迎えるにあたって-

[大豆イソフラボンで筋力の低下を軽減]

日本の自然を大事にするという考えの中ではぐくまれた食文化である「和食」。世界的にも認められ2013年には「ユネスコの無形文化遺産」に登録されています。

和食の食材というといろいろありますがその中のひとつに大豆を使ったものがありますよね。納豆、豆腐、味噌などを初めてとして豆料理などといろいろとあります。

この大豆に含まれる成分で代表的なものといえば「イソフラボン」。一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。いろいろな効果があるといわれていますね。

写真はイメージです。photo by pakutaso

2018年1月にイソフラボンに関して「イソフラボンを少量摂取することで老化などに伴う筋力低下が軽減される」との研究結果を東京工業大学などのグループが欧州栄養学会機関誌「European Journal of Nutrition」上で「The influence of isoflavone for denervation-induced muscle atrophy」として報告しました。

老化などに伴う筋力低下とはなんでしょうか。このことは高齢化社会が迎えている現在にとっては社会問題のひとつになりつつなっているともいわれています。老化に伴う筋力低下にてついてみてみましょう。

[老化などに伴う筋力低下をサルコペニア(加齢性筋減弱症)といいます]

わたしたちの全身の筋肉(骨格筋)はからだの50%から60%をしめています。からだを動かすため、運動をするため、体温の維持ためなど重要な役割を果たしています。

サルコペニアとは加齢や疾患などが原因となって筋肉量が減少していくことで「筋萎縮」といわれる状態になることです。手や足の筋肉をはじめとして体幹の筋肉など全身の筋肉の機能低下を招きます。原因は大きく二つに分けられます。

一次性サルコペニア老化以外の原因が特定できないもの。
二次性サルコペニア寝たきりや不活発な生活習慣、がんや循環器などの重い疾病、なんらかの原因で栄養が十分摂れていないなど。

サルコペニアは歩くスピードが遅くなる、手すりや杖をつかないとあるくのがつらい、ペットボトルや缶のふたが開けられない、ものを飲み込みづらくなる、転倒してしまう、着替えや入浴など日常生活できなるなどのさまざま症状が現れてきます。

写真はイメージです。photo by irasutoya

サルコペニアについていままで筋肉量の減少を軽減するための食品成分の研究が行われてきました。とくに大豆イソフラボンは有効な候補とひとつです。大豆イソフラボンが効果的であるとした研究はありますが食事中の20%という多量なものでわたしたちへの応用は不可能であると指摘されていました。

それでは多量ではなく少量の大豆イソフラボンの摂取ではどうなのでしょうか。少量のイソフラボンでどのくらい筋萎縮が軽減できるのかどうかについてはわかっていませんでした。

[少量の大豆イソフラボン摂取で筋萎縮に効果がある?]

今回の研究では少量の大豆イソフラボンの効果についての検証としてマウスを使って大豆イソフラボンをわずか0.6%だけ含むエサ食べさせたグループと普通食のエサを食べさせたグループに分けて経過観察を2週間行いました。

実験に用いられた大豆イソフラボンは「アグリコン」といわれているものです。通常、大豆イソフラボンは糖と結合した形で存在しています。体内ではそのまま吸収されるのではなく腸内細菌の働きで糖が切り離されてアグリコンとなって体内に吸収されます

実験では筋委縮をおこさせるためにマウスに除神経(神経切除)を施しました。徐神経を施すと筋肉内でアポトーシスが起きて筋肉細胞が減ることによって筋萎縮を起こすことがわかっています。

アポトーシスとは細胞がみずからの役割を終えた時や不要になった時に細胞自身がみずから死ぬ(自殺)ことで個体をよりよい状態に維持しようとする細胞自体に備わっている機能です。徐神経することで細胞が不要な状態となったと勘違いしてアポトーシスを起こしたことになります。

アポトーシス模式図photo by wikimedia

実験の結果では大豆イソフラボンを与えたマウスでは筋萎縮の程度が有意に小さく筋萎縮が軽減されることがわかりました。

実験したマウスの筋細胞を観察すると大豆イソフラボンのエサを与えたマウスのほうが筋細胞は大きくしっかりしていていたこと、アポトーシスを起こす程度が少なかったことが確認されています。

このことからアポトーシスの機能を大豆イソフラボンが抑制して徐神経による筋萎縮による細胞数の減少を軽減したと考えることができます。

研究チームは「高齢化社会を迎えるわが国ではサルコペニアは重要な社会問題になりつつある。サルコペニアを軽減する薬剤の候補はいくつかあるものの食品で有効な素材が現在は見当たらない。大豆イソフラボンの摂取がサルコペニアを軽減できるのかどうかについてさらに詳しく検証していく」と述べています。

写真はイメージです。photo by pixaboy

さらに詳細な検証が進むとほかにもいろいろとわかることがあるかもしれせんね。最近ではパソコンなどのディスクワークが多くなり座る機会が増えて若い人でも筋萎縮が起こっているといわれています。

研究の成果を踏まえると大豆製品を少しでも毎日欠かさずとるように心がけることがいいかもしれませんね。

 

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