トランスサイレチン型心アミロイドーシスにたいするタファミジス

アミロイドーシスは、線維構造をもつタンパク質アミロイドが、臓器に沈着することにより起こる疾患の総称です。

そのなかで、トランスサイレチン型心アミロイドーシスは、診断後の平均余命が3~5年ともいわれており、有効な治療法の開発が求められています。

アミロイドーシスとは?


アミロイドーシスは、不溶性のアミロイド細線維が全身のさまざまな臓器・組織に沈着することにより障害され、症状が発現します。

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全身のいろいろな部位に沈着する全身性アミロイドーシスと、ある臓器にのみ沈着する限局性アミロイドーシスに分けられ、よく知られているアルツハイマー型認知症は限局性アミロイドーシスに分類されます。

それぞれのアミロイドーシスはさらに原因となるアミロイドタンパク質により細かく分類され、現在までに30種類を超えるアミロイドーシスが報告されています。

“トランスサイレチン型”は、トランスサイレチンとよばれる四量体輸送タンパク質の不安定化が原因となります。不安定な四量体が解離し、ミスフォールディングが起きることによってタンパク質が凝集、アミロイド線維を形成・沈着することにより症状が発現すると考えられています。

全身性アミロイドーシスは、多彩な全身症状を呈しますが、おもな症状として、全身衰弱や不整脈・心不全などの心症状、タンパク尿・腎不全などの腎症状、手足のしびれ・麻痺が挙げられます。

“心アミロイドーシス”は、心臓にアミロイドが沈着し機能が低下した状態を指し、全身性アミロイドーシスが部分的に現れた症状です。

沈着するアミロイドの種類によって臨床所見や予後は異なりますが、主に、心臓にアミロイドが沈着することで心室の壁が厚くなり拡張および収縮する力が低下し、心不全となることや、刺激伝導系に沈着することで不整脈を起こすといわれています。

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アミロイドーシスの治療は、種類によっては原因治療が可能となっていますが、多くの場合、機能の悪化を遅らせる治療や症状を和らげる対症療法が中心となっています。

心アミロイドーシスに関しても、心不全に対する薬物療法や、症状によりペースメーカー、除細動器などの対症療法が行われています。

臨床試験がすすめられているトランスサイレチン型アミロイドーシス治療薬


トランスサイレチン型心アミロイドーシスは、進行性心不全をともなう希少疾病であり、現在のところ適応症として承認された薬はありません。

そこで、ファイザー株式会社では、トランスサイレチンを特異的に安定化させる効果をもつ「タファミジス(商品名;ビンダケル)」のトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対する有効性について検証しています。

なお、タファミジスは、日本において2013年に、“トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの末梢神経障害の進行抑制”の効能・効果で承認されています。

今回行なわれたATTR-ACT試験(多施設国際共同第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照・無作為化3群間比較臨床試験)では、遺伝性の変異型トランスサイレチン型家族性心アミロイドーシス患者さんおよび、非遺伝性の加齢によって発現する野生型の患者さん441名を対象として、1日1回20mgまたは80mgのタファミジスメグルミンカプセルの有効性、安全性および忍容性をプラセボと比較評価しています。

その結果、タファミジスは、原因を問わない全ての死亡および心血管事象による入院回数を組み合わせた複合評価項目で統計学的に有意な低下を示したことが報告されました。(ファイザープレスリリースより)

米国食品医薬品局(FDA)は、2017年6月にトランスサイレチン型家族性心アミロイドーシスを適応としたタファミジスを迅速審査の対象に、日本では2018年3月、先駆け審査の対象に指定しています。

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今までトランスサイレチン型心アミロイドーシスを適応とした治療薬はありませんでしたが、今回の臨床試験によりタファミジスが同疾患に対して有効である結果が示されました。

今後、治療の選択肢のひとつとなり、患者さんの症状改善に寄与することが期待されています。

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