再興感染症 最近増えてきているツツガムシ病

再興感染症とは過去一時的に発症が減少していたのにも関わらず、現在、再度発症が増加してきている感染症のことを指します。結核、マラリア、デング熱などが一般的な再興感染症とされていますが、今回はその中から人獣共通感染症でもあるツツガムシ病をご紹介したいと思います。

ツツガムシ病とは?

ツツガムシ病はOrientia tsutsugamushiという偏性細胞内寄生菌であるリケッチアを原因とする感染症であり、ツツガムシというダニの仲間によって媒介されます。原因となるツツガムシはアカツツガムシ、タテツツガムシ、フトゲツツガムシの3種類が確認されており、それぞれのツツガムシの3%未満が細菌を保菌していると考えられています。


ツツガムシリケッチア photo by wikipedia

ツツガムシは一生のうちに一回だけ人間を含む哺乳類から組織液を摂取しますが、原因菌が人間の体に感染するまでには6時間以上の吸着が必要になります。自然界では主にネズミなどから組織液を採取していますが、菌が感染しても人間以外の動物が症状を示すことはなく、感染した動物と人間が接触してもツツガムシ病に感染することはありません(感染した人間との接触によっても感染は起きません)。

1-2mmのダニの刺し口、2-5mmの発疹、および38度以上の高熱が、一般的な臨床兆候とされており、症状は感染してからおよそ1-2週間後に現れます。また、刺し口付近のリンパ節腫脹を伴うことも多く、診断が遅れると播種性血管内凝固などの全身性疾患に移行し、死に至ることもあるため的確且つ迅速な診断が必要となります。治療は主にテトラサイクリン系などの抗生物質が使用されます。


皮膚症状 photo by wikipedia

ツツガムシ病の疫学

ツツガムシ病は、戦前は東北の一部地域で見られる風土病でしたが、現在では全国に広がり、2000年以降年間約400人の発症が認められています。戦前に流行っていた古典的ツツガムシ病は主にアカツツガムシによって媒介されていましたが、アカツツガムシが消滅したため現在ではタテツツガムシ、フトゲツツガムシが主な感染ルートとなっています(新型ツツガムシ病)。これが再興感染症とも呼ばれている所以です。

新型ツツガムシ病は沖縄と北海道を除くほぼ全国で発生が認められており、秋から初冬にかけて関東〜九州地方、春から初夏にかけて東北・北陸地方での2大ピークが見られます。

ツツガムシ病の予防

ツツガムシ病に対してのワクチンなどは存在しないため、ダニの吸着を防ぐことが最も重要な予防法になります。発生のピークである秋から春にかけては山菜採りやキノコ狩りのシーズンで山に入ることも多くなりますが、長袖・長ズボン・帽子の着用を心がけ極力肌の露出を防ぎましょう。


写真はイメージです。 photo by photo AC

最後に

ツツガムシ病は4類感染症の中でも最も発生が多い感染症の一つです。今までご紹介してきた人獣共通感染症とは違い、感染した動物(哺乳類)から人間に感染が成立することはありませんが、ダニ媒介性感染症としては是非知っておいてください。

 

 

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