非結核性抗酸菌症が増えています

細菌は常に私たちの周りに存在しますが、時に感染症として猛威をふるいます。これまで人類は抗菌剤をつくり、健康を脅かす細菌と闘ってきました。

現在でもそれは続き、新種の菌が発見されてはそれに対する新しい治療法が確立していく、というサイクルが繰り返されています。

今までに数多くの細菌による疾患が報告されていますが、最近では「非結核性抗酸菌症」が増加傾向にあり注目されています。

非結核性抗酸菌症とは

非結核性抗酸菌症とは、その名の通り非結核性抗酸菌による感染症です。抗酸菌は結核性と非結核性に分けられ、区別された数種類の菌を総称して非結核性抗酸菌とよびます。

主に肺に感染し症状が発現しますが、まれに皮膚や骨への感染がみられる場合もあります。非結核性抗酸菌は土や水、ほこりなどの自然界のあらゆるところに存在する菌であり、それらを吸入、飲食することで感染します。

ただし、非結核性抗酸菌は結核とはちがいヒトからヒトへは感染しません。また、急速に症状が悪化することもなく、ゆっくりと進行していきます。

感染初期には無症状の場合が多く、進行すると咳や痰、発熱、倦怠感などの症状が発現します。数十年かけて進行、再発するため薬が効きにくく、難治性の疾患のひとつと言われています。

非結核性抗酸菌症の診断

非結核性抗酸菌症は、検診時の胸部レントゲンなどの画像診断で発見されることが多くあります。

画像で異常な陰影をみとめた場合、喀痰などの検体から菌を同定することにより確定診断がくだされます。

ただ、非結核性抗酸菌は自然界に多く存在する菌であるため、偶然痰中に排泄される場合があり、診断を確定するには複数回の菌の検出が必要となります。

非結核性抗酸菌症の治療

非結核性抗酸菌症と確定された場合、治療を行いますが、症状の進行度が人それぞれであることから適切な治療開始時期については明確に決まってはいません。

今のところは患者一人ひとりの症状や年齢、合併症などを考慮した上で、いつから治療を始めるか医師が総合的に判断しています。

治療法は基本的に抗菌薬による治療が行われます。

非結核性抗酸菌症につかう抗菌薬

しかし、非結核性抗酸菌症に対する有効な治療薬はまだ存在せず、治療には結核に準じた複数の薬の併用が行われます。

進行の遅い疾患のため、服薬も数年にわたる場合が多いのが実情です。用いる薬は起炎菌の種類により多少違う場合がありますが、

マクロライド系抗菌薬(主にクラリスロマイシン)、リファンピシン、エタンブトールを併用するのが現在の標準的な治療法です。

非結核性抗酸菌症の今後

耐性菌の発現や現存している薬では根治が難しいことなど多くの問題が残っているのが現状です。

非結核性抗酸菌症の患者さんは今後さらに増えることが予想されています。ひとりでも多くの患者を救えるよう、疾患のさらなる解明、治療法の確立、新しい治療薬の開発が望まれています。

また、耐性菌を出さないためにも、患者さん自身も自己判断で治療を止めたりせず、しっかりと指示通り服用を継続することが大切です。

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