腸内細菌がたべるものを決めている?キイロショウジョウバエの研究から

 

「腸は第二の脳」と聞かれた事がある方も多いと思います。書店を覗くと腸内環境改善などに関する書籍を目にすることがあります。脳と腸は、お互いに影響を与えていて、これを「脳腸相関(Wikipedia より原文英語)」といいます。

 

 

また、腸内環境は腸内細菌に左右され身体にも影響を及ぼし、食物によって腸内細菌の状態が変化することも知られています。

食物によって腸内細菌が影響を受け、逆に、腸内細菌によって食べたい物が変化しているとしたら、腸と脳のかかわりをより深く説明できます。

腸内細菌により食べたい物が変化する

この腸内細菌と食物の関係について、バイオメディカル分野の研究を行うシャンパリモード未知問題研究所は、2017年に腸内細菌が宿主に足りない栄養素を認識させ、

食物の嗜好も変化させるという研究結果「人間のなかにいる細菌および必須アミノ酸が食糧を選ぶ行動を制御している(原文英語)」を発表しました。

 

photo by Wikipedia

 

この研究は、生物学においてモデル生物と有用とされる「キイロショウジョウバエ」の食習慣を観察することで行われました。

研究を段階的にみていきますと、以下のようになります。

アミノ酸のない食事を食べた後はタンパク質をとりたくなる

まず、研究グループは、キイロショウジョウバエを三つのグループに分け、それぞれ、異なる餌を与えました。

第1のグループは必須アミノ酸を全て含んだ餌

第2のグループはいくつかの必須アミノ酸を取り除いた餌

第3のグループは特定の必須アミノ酸のみ取り除いた餌(必須アミノ酸がどの細菌と結びついているか判断するため)

72時間後に、単なるショ糖だけの餌とタンパク質を豊富に含んだ餌を与えると、第2のグループと第3のグループはタンパク質を豊富に含んだ餌を強く好みました。

タンパク質は必須アミノ酸で構成されていますが、

必須アミノ酸は体内で生成できず、食物から取り込む事しかできません。その為に、タンパク質を豊富に含んだ餌を強く好むようになったと考えられます。

特定の腸内細菌がなくなるとタンパク質をもとめなくなる

次に、5種類の腸内細菌を取り除き、必須アミノ酸を制限すると、タンパク質を豊富に含んだ餌を強く求めるような事はありませんでした。

当然、必須アミノ酸のレベルは低いままです(ハエの成長を阻害され、生殖能力も落ちます)。

腸内細菌が取り除かれた影響により、タンパク質を豊富に含んだ餌を求めることがなかったと考えられます。

腸内細菌が身体に必要なものの情報をおくっている

この5種類の腸内細菌を選択的に増やしたところ、

タンパク質を豊富に含んだ餌を強く求めるような2種類の細菌を特定しました。生殖能力の回復もみられ、生存するのに好ましくない栄養状態に対応したことになります。

更に、アミノ酸を処理するのに必要な酵素をハエの体内から取り除き、酵素の影響を検証しましたが、ハエが食べ物から酵素を求めることはありませんでした。

腸内細菌がアミノ酸によってのみ、タンパク質を豊富に含んだ餌の摂取するように認識したことになります。

これらの結果から、腸内細菌が特定のアミノ酸を感知し、宿主の脳に必要なもの(食べたいもの)の情報を送っていることを示すことが確認されました。

腸内細菌がどのような仕組みで脳に働きかけるか、

腸内細菌が特定のアミノ酸のみをなぜ認識するかまでは明らかにはなっていませんが、腸内細菌が進化するにあたって、何らかの理由(宿主を守るなど)があったのかもしれません。

腸内環境を整えましょう

この研究結果から、腸内細菌が身体に必要なもの(食べたいもの)をコントロールしていると考えられます。

腸内環境が整っていれば、自然と身体に必要なものを求めることになります。

逆に、偏った食事や過食は、腸内環境を悪化させ、本来、必要な腸内細菌が減ってしまい、

身体に必要なものを求めなくなり、同じような好ましくない食生活を送ってしまう悪循環に陥る危険性も示唆しています。

腸内環境を改善するような食事をすれば、自然と身体に必要なものが摂れて、健康を保つ事につながりそうです。腸内環境を整える食生活を心がけることが大切かもしれません。

参照:PLOS

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