子宮内膜症関連の疼痛にGnRHアンタゴニスト製剤であるエラゴリックスが効果あり


写真はイメージです。photo by Feline Butcher

赤ちゃんを産む身体になったと同時に始まる月経ですが、多くの女性が月経時の痛みに悩まされています。

痛みの原因はさまざまありますが、その中で子宮内膜症とよばれる病気で月経痛が現れている場合があります。推定260万人もの女性が子宮内膜症にかかっていると言われていて、不妊にも関連があり早期の発見、治療が必要です。

子宮内膜症とは 子宮内膜の組織が子宮以外にできる

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所にできてしまう病気です。

通常の子宮内膜と同じように、子宮以外のところにできた組織も、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの影響でその組織が増えたりはがれたりします。子宮以外の場所ではがれた内膜や血液は膣から体外へ出ていくことができないため、その場で小さな血の塊を作り、炎症や痛みを引き起こします。

この状態を放っておくと、どんどんと病巣が広がり、病巣に卵巣や腹膜などが癒着し、次第に日常生活に支障をきたすようになります。進行を止めるためにも早い段階で治療を行うことが大切です。

子宮内膜症の症状、診断、治療

症状は人によってそれぞれですが、強い月経痛や骨盤痛(月経時以外の下腹部痛、腰痛など)、経血量が多いなどの症状が多くみられます。月経回数を重ねるごとに症状が強くなっていくことが特徴です。

子宮内膜症の診断には通常、内診や超音波検査、血液検査が行われます。検査により診断が確定すると治療が開始されます。

治療は大きく分けて、手術療法と薬物療法に分けられます。症状や将来子供か欲しいかなどを考慮したうえで治療が選択されます。子宮内膜症はエストロゲンの影響を受けて発症する疾患のため、薬物治療ではエストロゲンの働きを抑える薬を使用します。妊娠時や閉経後は子宮内膜症の改善がみられることから、偽妊娠療法または偽閉経療法とよばれる治療が行われます。

偽妊娠療法では、ピルやプロゲステロン製剤などを用いて妊娠に似た状態を作り出すことで子宮内膜症を改善します。

偽閉経療法ではエストロゲンの分泌をコントロールしている性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)に働く薬、もしくは男性ホルモン誘導体であるダナゾールを用いてエストロゲンを抑制し、閉経に似た状態を作り出す療法です。痛みが強い場合には鎮痛剤を併用する場合があります。

子宮内膜症の新しい治療法とその効果

子宮内膜症の治療薬はいくつか発売されていますが、患者さんそれぞれに合った治療法を選択するためにも新しい治療法の登場が期待されています。

2017年5月に発表された論文「Treatment of Endometriosis-Associated Pain with Elagolix, an Oral GnRH Antagonist」ではGnRHアンタゴニスト製剤であるエラゴリックスが子宮内膜症関連疼痛に与える影響について解析を行っています。

中等度から重度の子宮内膜症関連疼痛を有する女性患者を対象に、エラゴリックス低用量服用群(150mg1日1回)、高用量服用群(200mg1日2回)、プラセボ群に分け、6か月間にわたり解析を行っています。

その結果、低用量群では46.4%、高用量群では75.8%の患者さんに月経痛の改善がみられました。また、月経と関係しない骨盤痛についても、両群ともに改善がみられました。有害事象をみると低用量、高用量服用群ともにエストロゲンが低いことで生じるほてりや脂質異常、骨密度の低下などの症状がありました。

これらの結果から、エラゴリックスが子宮内膜症関連疼痛に有効であることが示唆されます。今後、さらなる研究により子宮内膜症の新しい治療が確立し、治療の選択肢が増えることが期待されます。

参照:NEJM

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