やけど患者さんを助けるスキンバンク ドナー不足の解消へ


写真はイメージです。photo by Iwan Gabovitch

私たちは、何気ないきっかけでやけどをすることがあります。軽いやけどでは自然に治るのを期待できますが、体表の大部分に及ぶやけどをした場合は、命に関わる危険性があります。

重度のやけどの治療では、本人の皮膚を自家移植し治療を行う必要があるものの、患者本人の皮膚は広範囲がやけどで損傷しているため自家移植できる皮膚が足りません。

そこで、我が国では、広範囲のやけどの患者さんを救うスキンバンクという制度があります。

スキンバンクとは何か

スキンバンクとは、生前に皮膚提供の意思を示していた人や、死後家族の承諾を得た人から提供された皮膚を凍結保存または培養し、必要に応じて供給するシステムです。スキンバンクに提供された皮膚は、重度のやけどを負った本人の皮膚が再生するまで治療に用いられます。

スキンバンクは元々アメリカで始まった取り組みですが、日本では1991年に杏林大学救命救急センターと日本医科大学に導入され、2006年には日本スキンバンクネットワーク協会が設立されました。

現在では、スキンバンク参加施設が全国に82施設あります。

日本にスキンバンクが導入されて以降、多くの皮膚が提供されるようになり、それまで広範囲のやけどの患者は生存率が30%未満でしたが62%に上げることができました。

スキンバンクの現状と今後

2008年までは皮膚提供数も保存数も右肩上がりだったものの、最近では提供数も保存数も年々減少しています。ドナー情報はあるものの提供に至らない場合や、細菌やウイルス感染の影響で皮膚が保存されたまま使われていない場合もあります。

そのため、日本スキンバンクネットワークではドナー不足、保存皮膚不足解消のため協力を呼びかけています。

やけど患者への皮膚移植経験が豊富な帝京大学の池田弘人氏は、「人工皮膚は進歩したが、人の皮膚に匹敵するほどの機能はまだ達成できていない」と話しています。まだまだスキンバンクの必要性への理解が求められています。

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