薬剤抵抗性てんかんを伴うドラベ症候群に対するカンナビジオールの有効性


写真はイメージです。photo by  adam w

てんかんは100人中0.5~1人が発症すると言われる脳の病気です。小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症がみられますが、3歳以下の小児の発症が最も多くみられます。てんかんはいくつかに分類されますが、その中でドラベ症候群という難病に指定されている稀な疾患があります。

難病指定のドラベ症候群

ドラベ症候群は1歳未満に発症し、全身または半身のけいれんを繰り返す疾患です。発熱や入浴などの体温の上昇によりけいれんが誘発されやすいのが特徴です。患者さんにより様々な発作を起こしますが、けいれん重積を伴いやすく、緊急入院となる場合が度々あります。

生後1年は脳の発達が活発な時期となりますが、ドラベ症候群を患っている場合、度重なるけいれんにより、発達に影響が出ることが知られていて、1歳を過ぎたあたりから発達遅延や運動失調の症状がみられるようになります。6歳をすぎるとけいれん発作が起きることは少なくなりなりますが、知的障害や運動失調などから成人期になっても自立した生活を送ることができる可能性は低いと言われています。

ドラベ症候群が発症する原因としてナトリウムチャネル遺伝子の異常が報告されていますが、不明なことも多く、根本的な治療法は確立されていません。

ドラベ症候群の治療は、てんかんの発作を防ぐため薬物治療が行われます。症状によってバルプロ酸ナトリウムや臭化物、クロバザム、カルバマゼピンなどのてんかん薬が選択されます。通常、1剤のみで症状を抑えることは難しく、何剤か併用して長期的に治療が行われます。

Jordan's Journey – Dravet Syndrome

video by Kim Fitzgerald 

ドラベ症候群のあらたな治療薬

しかし、ドラベ症候群患者さんでは薬剤に抵抗性をしめすことが多く、既存のてんかん薬では十分にてんかん発作を抑えられない場合があります。そこで、2017年5月に発表された論文「Trial of Cannabidiol for Drug-Resistant Seizures in the Dravet Syndrome」ではドラベ症候群の薬剤抵抗性てんかんに対するカンナビジオールの効果について報告しています。

薬剤抵抗性てんかんがみられるドラベ症候群の小児と若年成人を対象に、標準的なてんかん治療薬服用に加え、カンナビジオール経口液またはプラセボを追加投与し、痙攣性てんかん発作の頻度を解析しています。

その結果、1か月あたりの痙攣性てんかん発作の頻度はプラセボ群では14.9から14.1の低下にとどまったものの、カンナビジオール群では12.4から5.9に低下しました。痙攣性てんかん発作が50%以上低下した患者さんの割合をみるとプラセボ群で27%、カンナビジオール群で43%と改善がみられました。一方で非痙攣性てんかん発作の頻度は有意に低下しませんでした。全般的印象改善度が1段階以上改善した患者さんの割合はプラセボ群では34%、カンナビジオール群で62%となり、カンナビジオール服用群で大幅な改善がみられました。有害事象はカンナビジオール群にて下痢、嘔吐、疲労、発熱、傾眠、肝機能異常などが多くみられました。

これらのことから、薬剤抵抗性てんかんにおいてカンナビジオールが痙攣性てんかん発作の頻度を大幅に改善することが示唆されました。今後も研究が進み、てんかん治療がさらに進歩することが期待されています。

参照:NEJM

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