どの程度日常生活をおくれているのか評価する方法 〜Barthel IndexとFIMの違い〜


写真はイメージです。photo by Audrey

新しくリハビリテーションを始める際にリハビリスタッフは、患者さんの全身状態を評価します。その中の評価項目の一つにADL(日常どの程度の生活をおくれているかを表す指標があります。
病気になったりケガをすると、ADLは大きく変化します。リハビリテーションの途中、終了時にもADLの評価を行い、どのくらい改善している確認します。

ADLを評価する指標としてBarthel Index(BI)、Functional Independence Measure(FIM)があります。

リハビリテーション実施計画書とADL

1対1のリハビリテーションを行う際には、必ずリハビリテーション実施計画書を作成して患者さんにリハビリの内容やリハビリ後に、どのように状態が改善していると予測されるのか説明する必要があります。

リハビリテーション実施計画書には、必ずBIかFIMのどちらかを評価・記載します。また、医師、看護師などの他職種との情報を共有する際にもADLの評価として用います。

このように、リハビリテーションのみならず普段からADLがどの程度かという評価は大事になっています。今回はこの2つの違いについてお話しします。

BIとFIMの違い

BIは1965年に考案され、現在は改訂2版を用いています。食事、移乗動作、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排尿コントロール、排便コントロールの10項目を評価します。

各項目は5点刻みで、移乗と歩行は4段階(0-15点)、整容と入浴は2段階(0-5点)、他は3段階評価(0-10点)で点数をつけて、合計100点満点で何点になるか採点します。

一方のFIMはアメリカで考案され、日本では慶應大学病院月ヶ瀬リハビリセンターによる日本語版が用いられています。

大項目として運動機能と認知機能に分けて分類します。

運動機能は大筋でBIとほぼ一緒ですが、更衣動作は上半身・下半身で別れていて、移動も歩行か車椅子か移動形態に応じて採点します。また、認知項目としてコミュニケーション、社会的認知項目において採点します。

社会的認知項目とは、他者とのやりとりや短期記憶、患者さん自身が問題解決をできているかという点になります。全部で18項目を1点から7点を配点していき、126点満点で何点になるか採点します。

採点基準は7点:自立、6点:修正自立(時間を要する、安全配慮を要する、装具等の使用)、5点(監視)、4点(最小介助25%以下)、3点(中等度介助25~50%未満)、2点(最大介助50~75%未満)、1点(全介助75%以上)となっています。

BIとFIMのメリット・デメリット

ここまで、BIとFIMをそれぞれ紹介しました。ここからは相違点を中心に利点・欠点を紹介していきます。一番大きな違いとしては、BIでは「できるADL」を評価しているのに対し、FIMは「しているADL」を評価している点です。

BIで、できると評価している動作もFIMでは評価していないため点数が下がる、その逆も然りとなっています。他の相違点は下記一覧に示していますので、それに基づいて説明します。

Barthel IndexFIM
利点簡便である

わかりやすい

国際的指標となっている

細かい評価ができる

認知機能の項目がある

国際的指標となっている

欠点評価基準が漠然としていて、全体像や細かいADL能力を捉えにくい

項目によって得点の配分が異なるが、理論的根拠ができていない

項目が多く判別に時間を要する

判定に熟練を要し、評価者が異なると判定結果が必ずしも一致するとは言えない

2~4点の判定が難しい
幼児には用いられない

利点としてBIは簡便でわかりやすいという特徴を持ちます。一方のFIMは詳細な評価によって、患者さんの状態を掴みやすいという特徴があります。

欠点としては、BIは段階が少ない分漠然としていて、全体像を捉えにくくなっています。FIMは、項目が多く配点も細分化されていて判別に時間を要します。

FIMでは、前述の段階2~4の該当基準が非常に難しく、また、幼児には用いることができず、幼児に用いる場合には幼児用のWee-FIMまたはPEDIという評価法を用いることになります。

実際にBIとFIMはどちらが便利か

では、現場ではどちらを用いているのでしょうか。答えは両方用いています。筆者が勤務する急性期病院では、ほとんどBIを用いて評価を行いますが、必要に応じてFIMを用いることもあります。

転院先の病院に送る紹介状では、FIMを要求されることが多く、特に回復期病院に紹介する際には顕著になっています。BIとFIMの相関性は未だに判明してなく、当面は両方運用していくと考えられます。

どちらの指標を使うにせよ、より正確に患者さんの状態を把握し、今後のリハビリテーションをより客観的に、より有効に行っていくことが大切になっていきます。

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