網膜静脈閉塞症に対するベバシズマブの効果


写真はイメージです。 photo by hobbs_luton
近年、高齢化に伴い眼疾患の発生が増えてきています。黄斑疾患もその一つであり、年々増加傾向にあります。重症化すると失明する危険性もある疾患であり、より効果的で安全性の高い治療法が望まれています。

黄斑と網膜静脈閉塞症

目はものを見るためには欠かせない器官ですが、その中で最も重要な働きをすると言われているのが網膜にある黄斑と呼ばれる部位です。光の情報の大部分が黄斑により識別され、視神経を通って脳へと伝わり映像として認識されます。

そのため、黄斑に異常が起こると正確な情報が送れなくなるため視力低下など様々な症状があらわれます。黄斑疾患は加齢性黄斑や糖尿病網膜症などが挙げられますが、網膜静脈閉塞症もそのひとつです。

網膜静脈閉塞症は、網膜の静脈が詰まり、出血やむくみを起こす疾患です。視力低下や視野が欠けるなどの自覚症状が発現します。歳を重ねるごとに発症しやすくなり、中でも血圧が高い方や動脈硬化がみられる方に起こりやすいと言われています。

網膜静脈が閉塞すると静脈内の圧力が上昇し、血液や水分が溢れ出てしまい、眼底出血や網膜浮腫が発現します。また、虚血状態となった網膜に血管新生が生じ、これによりできた脆い血管が破れることで硝子体出血を起こしたり、血管新生が原因となり網膜剥離を引き起こすこともあります。放置しておくと視力回復が難しくなるため、見え方に異変を感じたらすぐに専門医に相談することが大切です。

網膜静脈閉塞症の治療はいくつかあり、浮腫の改善や血管新生を抑制することで症状の回復を目指します。治療法として、レーザー光を当てることで網膜を焼き固め、浮腫や血管新生を防ぐ方法や硝子体を手術する方法、薬を硝子体内に注射する方法などが主に挙げられます。

硝子体内注射には、ステロイド薬や抗VEGF(血管内皮細胞増殖因子)薬が用いられます。抗VEGF薬はVEGFの働きを抑制することにより血管新生が起こるのを阻害し、症状の進行を抑える効果があります。また、VEGFによる血管の透過性亢進を抑える作用も発揮するため、浮腫に対しても効果を発揮します。

網膜静脈閉塞症と抗VEGF薬

現在、抗VEGF薬はいくつか開発され、黄斑疾患に対しての有効性が確認されています。その中、大腸癌などの治療薬であるベバシズマブが黄斑疾患に対しても効果を発揮するのではと注目が集まっています。ベバシズマブは他抗VEGF薬に比べ安価であり、患者さんの経済面での負担が軽減することが期待されています。

そこで、2017年5月に発表された論文「Effect of Bevacizumab vs Aflibercept on Visual Acuity Among Patients With Macular Edema Due to Central Retinal Vein OcclusionThe SCORE2 Randomized Clinical Trial」ではFDAが推奨している抗VEGF薬アフリベルセプトとベバシズマブを比較し、効果に差があるか報告しています。

黄斑浮腫がみられる網膜静脈閉塞症患者さんを対象に、アフリベルセプト投与群とベバシズマブ投与群に分け、4週間ごと6か月にわたり硝子体内注射を行っています。

その結果、6カ月治療後の両群の視力の変化をみると2群間に有意な差をみられませんでした。有害事象をみるとアフリベルセプト投与群で眼圧の上昇、ベバシズマブ群で眼内炎が数例みられました。

このことから、ベバシズマブの黄斑浮腫がみられる網膜静脈閉塞症に対しての視力回復効果はアフリベルセプトに劣らないことが示唆されました。

今後も研究が続き、効果・安全性の高い治療法が開発されることが期待されます。

参照:JAMA

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