サルコイドーシスの皮膚病変に対する抗TNF-α製剤の効果と安全性



写真は肺サルコイドーシスです。 photo by Yale Rosen


聞き馴染みのない疾患ですが、全身の様々な部位に肉芽腫ができるサルコイドーシスという疾患があります。症状が軽く自然寛解することも多い疾患ですが、中には難治性で治療を必要とする患者さんもいます。難治性の場合、QOLの低下や命を脅かす危険性があり、効果的な治療法の開発が望まれています。

サルコイドーシスとは


サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患です。類上皮細胞やリンパ球が集まり出来た肉芽腫が全身のさまざまな部位でみられるのが特徴です。

中でも肺や眼、皮膚に高頻度で発現がみられます。眼や皮膚に病変が発現した場合、自覚症状があらわれやすいと言われており、眼症状としてはかすみ目や視力低下、飛蚊症などがみられます。


写真は皮膚サルコイドーシスです。 photo by Nowack et al.


皮膚病変は顔や四肢などさまざまな部位に症状が出ることがあり、大きく分けて皮膚サルコイド、瘢痕浸潤、結節性紅斑の3つに分類されます。皮膚サルコイドは痛みや痒みの伴わない赤い斑点がみられることが多く、生検すると特徴的な類上皮細胞肉芽腫がみとめられます。瘢痕浸潤は膝など昔すりむいて出来た痕に肉芽腫がみられるのが特徴です。

その他、サルコイドーシスは心臓や神経、筋肉、関節など多臓器にわたり発現が報告されています。患者さんにより病変部が違い、症状も異なります。

臓器に出来た病変により症状を呈する場合もありますが、疲れや痛み、息切れなど非特異的な全身症状を伴う場合もあります。しかし、一方で自覚症状がなく検診などで発見されるケースも多い疾患です。

サルコイドーシスと診断されても、症状が軽度の場合は自然に寛解することが多く、経過観察となるのが一般的です。症状が進行した場合や重症の場合には治療を必要とし、一般的にステロイド薬や免疫抑制薬が使用されます。

サルコイドーシスに抗TNF-α製剤


しかし、中にはステロイドや免疫抑制剤を用いても十分に効果が得られず、症状の悪化や再燃がみられる難治性サルコイドーシスの患者さんもいます。そのような患者さんに効果が期待されているのが抗TNF-α製剤です。

抗TNF-α製剤は現在、リウマチやクローン病などいくつかの疾患に対して有効性が認められています。サイルコイドーシスでも肉芽腫形成過程にTNF-αが深く関わることが明らかになっており、TNF-αの働きを抑制することで症状改善に効果を発揮することが期待されています。


2017年5月に発表された論文「Efficacy and Tolerance of Anti–Tumor Necrosis Factor α Agents in Cutaneous Sarcoidosis A French Study of 46 Cases」では皮膚病変がみられるサルコイドーシスにおける抗TNF-α製剤の効果と安全性について報告しています。

この研究では、組織学的にサルコイドーシスが確認され、抗TNF-α製剤を投与した症例を抽出し、治療による皮膚病変の変化を解析しています。抗TNF-α治療を受けた患者140人のうち46人が皮膚浸潤病変を有しており、そのうち21例が皮膚浸潤症状の改善を目的として投与が開始され、25例は内臓病変に対する治療でした。


結果をみると、3か月後の皮膚反応率は24%、6カ月後46%、12カ月後79%となり、抗TNF-α製剤使用により皮膚病変の改善がみられました。しかし、24%が有害事象により治療を中止しており、そのうち30%で感染症の発生がみられました。感染症の発生は内臓病変に対して抗TNF-α製剤を投与した患者群でより多くみられました(48% vs 9.5%)。再発率は治療中止後18カ月で44%にのぼりました。

このことから、抗TNF-α製剤はサルコイドーシスの皮膚病変に効果がみられるものの、安全性については不安が残り、特に感染症に対して注意が必要であることが示唆されました。

今後も研究が進み、有効性・安全性ともに高い治療法が確立されることが望まれます。

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