迅速で的確な対応が必要な敗血症性ショックに対するEGDTの効果


写真はイメージです。 photo by Oregon State University

敗血症性ショックは死亡率が高く、一度起きてしまうと予後はとても厳しいものになると言われています。軽度敗血症の段階で早期発見・治療が大切になるとともに、敗血症性ショックが起こった場合には迅速で的確な対応が必要とされます。

敗血症とは

敗血症は感染がきっかけとなり発症する全身性の炎症反応です。

感染した細菌やウィルスなどの微生物が血液に侵入し全身にまわり、全身症状を引き起こします。私たちの身体は侵入してきた微生物に対して免疫反応により立ち向かいますが、敗血症では免疫反応の制御ができなくなることで炎症反応が起き、組織や臓器が障害を受けてしまいます。

敗血症では微生物が作る毒素や炎症反応によりさまざまな症状が発現します。意識低下や頻脈、血圧低下などの症状が発現したら早期に医療機関を受診することが大切です。

敗血症にはいくつか段階がありますが、その中でも最も重い症状を呈するのが敗血症性ショックです。敗血症性ショックは臓器障害または臓器灌流異常がみられる重症敗血症のうち、適切な輸液を行っても低血圧が持続する状態のことを指します。

命に関わる重篤な状態であるため、迅速な治療を必要とします。敗血症性ショックの治療では抗生剤による感染の制御とともに大量の補液や昇圧剤などによる臓器灌流異常の改善がはかられます。

早期目標指向型治療(EGDT)

敗血症ショックの治療の中でも早期目標指向型治療(EGDT)という治療概念があります。初期6時間以内に血行動態を目標レベルまで改善させる蘇生戦略です。

中心静脈、中心静脈酸素飽和度を測定しながら急速補液負荷や昇圧剤、輸血またはドブタミン投与によりあらかじめ設定した値まで改善を目指します。

EGDTは救急医療において広く認知されていますが、有効性を示唆する研究がある一方で、有用性はないとする研究結果も出ており、いまだ明確な結論は出ていません。

2017年6月に発表された論文「Early, Goal-Directed Therapy for Septic Shock — A Patient-Level Meta-Analysis」では敗血症性ショックに対するEGDTの有用性について解析を行っています。

このメタ解析ではさまざまな患者背景や病院特性においてEGDTを受けた群と通常治療を受けた群を比較し、90日死亡率について評価しています。

その結果、EGDTと通常治療では90日死亡率は同程度であり、有意な差はみとめられませんでした。また、通常治療に比べてEGDTでは集中治療室在室期間、心血管系補助薬使用期間が長く、平均費用も高い結果となりました。

このことから、EGDTは予後を改善しないことが示唆されました。

敗血症性ショックは命に直結する重篤な疾患であり、今後より効果的な治療法が確立されることが望まれます。

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