重症気管支喘息へのベンラリズマブ投与が経口ステロイド減量に有用

近年、治療薬の進歩とともに気管支喘息の治療もより良いものへと発展しています。年々、喘息治療のために入院する患者さんは減り、喘息による死亡数も減少しています。

いっぽうで、気管支喘息の治療は長期間にわたることもあり、特に症状の重い喘息に対する治療では、経口ステロイドを多く内服していることが課題となっています。

そもそも気管支喘息とは

気管支喘息とは、空気のとおりみちである気道に、慢性的な炎症が起こり、気管がせまくなったり、過敏な反応を引き起こす病気です。わずかな刺激に反応して、呼吸困難や咳を生じます。


写真はイメージです。 photo by WIKIMEDIACOMMONS

患者さんの気道の粘膜には、好酸球や肥満細胞などの炎症細胞が多く集まっていることが報告されています。炎症細胞が気管に多く集まり、慢性的な炎症が生じ、症状の発現を招くと考えられています。

実際に、気管支喘息の患者さんでは末梢血や喀痰中に多くの好酸球がみられ、症状の発現に関わっていることが示唆されています。

気管支喘息の治療では、発作を予防することを目標として、吸入ステロイドが基本的に使用されます。ステロイドは免疫を抑える作用や炎症・アレルギーをおさえる作用を持つ薬です。

炎症を起こしている気管に作用することで症状をよくして、発作をあらかじめ防ぐ効果を発揮します。

ステロイド以外にも、気管支を拡張する作用のあるβ2刺激薬やテオフィリン製剤などが長期管理薬として使用されています。

ステロイドの作用

ステロイドは、気管に直接作用し、長期的に使用しても安全性が高い吸入薬が使用されますが、症状が重い場合には、より強い抗炎症作用を求めて経口ステロイドが使用されることがあります。


経口ステロイド photo by Wikipedia

経口ステロイドは効果が強い分、副作用のリスクも高くなるため、必要最低限の量でなるべく内服する期間を短くすることが望ましいとされていますが、症状の重い気管支喘息の治療では、経口ステロイドに依存しているのが現状です。

そのため、呼吸の良好な状態を維持しつつ、経口ステロイドの減量に効果的な薬が望まれています。

新しい作用の気管支喘息治療薬ベンラリズマブ

このような状況のなか、注目されているのがベンラリズマブという薬です。ベンラリズマブはインターロイキン5(IL-5)受容体を標的として、好酸球を除去する作用をもつ生物学的製剤です。

IL-5受容体を発現している好酸球にベンラリズマブが結合すると、マクロファージやNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せられ、抗体が結合している好酸球の除去が行われます。

前述したように気管支喘息には好酸球が関与しており、ベンラリズマブが気管支喘息に効果的であると考えられています。

また、重症気管支喘息の患者さんに使用する経口ステロイド量の減量にも効果を期待されていて、2017年6月に発表された論文「Oral Glucocorticoid–Sparing Effect of Benralizumab in Severe Asthma」では、ベンラリズマブの経口ステロイドの減量効果について報告しています。

この論文では、成人の重症喘息患者さんを対象に、経口ステロイド薬に加えてベンラリズマブを皮下投与する群と、プラセボ投与する群に分け、28週間にわたり解析を行っています。

その結果、ベンラリズマブ群ではステロイドの服用を75%減少させたのに対し、プラセボ群では25%の減少にとどまりました。また、年間増悪率をみてもプラセボ群に比べ、ベンラリズマブ群では大幅な減少がみられました。しかし、最初の1秒間ではきだせる空気の量をあらわす1秒量(FEV1)に差は認められませんでした。


写真はイメージです。 photo by Alexandre Normand

このことから、ベンラリズマブは経口ステロイドの減量、喘息増悪率に効果的であり、いっぽうで、FEV1に対する効果は期待できないことが示唆されました。

まとめ

気管支喘息の治療は長期間に及ぶことが多く、重症気管支喘息に対しての経口ステロイドの長期間の投与は、ステロイドの副作用のリスクから問題となっています。

今回、重症の喘息の治療においてベンラリズマブが経口ステロイドの減量に効果があることが報告され、効果的で安全性の高い治療の手助けとなる可能性が示唆されました。

今後も研究が進み、よりよい治療法が確立されることが期待されます。

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