時代に逆行?関西医科大学総合医療センターが「院外処方」を辞めたワケ

薬は外の薬局で、が当たり前の今、以前のように薬も病院で、に舵をきった病院があるのをご存じでしょうか?

関西医科大学総合医療センターは、新本館開院となった2016年5月6日にそれまで行っていた「院外処方」を辞め、「院内処方」に改めました。

ただし、新たな方針を患者さんに無理強いすることはなく、「院外処方」を希望する場合は、従来通り院外処方箋を発行しています。つまり、院外処方か院内処方か、患者さん自身で選ぶことができるようになったのです。


関西医科大学総合医療センター photo by Wikipedia

「院内処方」から「院外処方」へ

そもそも、「院外処方」と「院内処方」の違いは何でしょうか?厚生労働省では1990年代から「医薬分業」を推し進めてきました。その大きな理由として、薬で利益を得ることの多かった医療機関が必要以上の薬を処方していたという背景があります。

多量の薬の使用に歯止めをかけるために、院内で調剤するよりも院外処方箋を発行する価格を高くし、病院が「院外処方」に積極的になるよう働きかけました。その結果、病院の近くにたくさんの調剤薬局ができはじめたのです。

「院外処方」のメリットは、自分で薬局を選択できること、また、薬について細かな知識を得られること、ジェネリックなどを自分で選べることなどがあります。しかし、デメリットとして上げられるのがその価格。

院内処方よりも高くなることでしょう。また、近くとはいえ、薬は別の場所に取りに行かなくてはならないことです。高齢の方の受診が多いことを考えれば、想像に難くはないでしょう。

 

関西医科大学総合医療センターの「メリット」とは

関西医科大学総合医療センターも2016年までの16年間、「院外処方」をしてきました。その16年間で、感じたこととして「そのメリットを十分に感じられなかった。」と述べています。

「院外処方」の病院のメリットと言えば通常は、処方箋を発行することで得られる処方箋料などです。「院内処方」に変えれば大きくこの部分での収入は減るでしょう。

では、関西医科大学総合医療センターの言うメリットとは何でしょうか。

それは、患者さんにとってのメリットです。院長の岩坂氏は、「患者さんの費用面の負担を軽減することと院内処方での利便性を高めたい。」という理由から、院内処方に踏み切ったとしており、開院から1ヶ月後には、院外処方箋発行率は40%台半ばになったといいます。


写真はイメージです。 photo bytpsdave

街の景観をも変えてしまった医薬分業

また、岩坂氏は、この16年間で変わってしまった病院を取り巻く環境についても、「昔は花屋もレストランもケーキ屋もあったのに、代わりに薬局が7軒もでき、街の景観が変わってしまった。」と語っています。

院内処方への方針転換により、薬剤師の新たな雇用など支出は増加し、処方箋料の減収で利益には結びついていないのが事実です。

けれど、それでは1歩伸びた病院にならないと決断を促した背景には、「林立した7軒の薬局には日用雑貨もなく、住民の役に立っていない。」との思いが大きく関係しているかもしれませんね。

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