だれにでも訪れる最期のとき 悲しみに寄り添うグリーフケア

家族や友人といった大切な人との死別を経験した場合、気分の落ち込みや睡眠障害など、人は心と身体にさまざまな違和感や症状があらわれます。

これは、グリーフ(悲嘆)と呼ばれ、喪失感により無気力にとらわれると同時に、立ち直ろうとする気持ちで揺れ動きます。

死別という慣れない状況に置かれ、さまざまな悲嘆の症状をみせる人に、そっと寄り添いサポートすることがグリーフケアです。

【グリーフによりおこる反応】

グリーフは、喪失感と立ち直りの揺れ動きです。初めのうちの揺れ動きは、1日の間に何回も起り、

精神や身体にさまざまな反応を引き起こします。


写真はイメージです。 photo by MaxPixel

・精神的反応

孤独とやるせなさ、罪悪感や無力感といった症状をしめし、なにがおきても感じない感情の麻痺が起こります。

・身体的反応

頭痛やめまい、よくねむれない、食べる気が起きない、体重が減ってしまった、さまざまな症状や疲労感が表面化してきます。

こういった反応は、時間の経過とともに揺れ動きが少しずつ治まっていきますが、何かのタイミングで再びあらわれる可能性を持っています。

【日本人が感じる悲嘆】

グリーフは、その国の文化や国民の性質によってもことなり、日本人と他の国の人では感じるグリーフにも違いがあります。

・思慕

[名]思いしたうこと。恋しく思うこと。

故人を思い起こし、かつての出来事など思い出に占有される、繰り返しアルバムを見る、仏壇に話しかけるなどがこれにあたります。

・疎外感

特別な目で見られている、知人とうまく打ち解けられない、孤独感を感じたり、他のひとの誘いに気後れをしてしまう。

・うつ的な不調

故人のいない生活を無意味に感じてしまう、無気力になったり今まで興味をもっていたことに無関心になるなど、「うつ」に似た症状を示します。本来のうつ症状との違いは、原因を本人が認識していること。

・適応対処の努力

自分を鼓舞し、じぶんを奮い立たせようと行動します。亡くなった人の分まで生きよう、頑張ろうとします。

思慕と疎外感、うつ的な症状は、喪失した感情による自然な「心的反応」といいます。いっぽうで、適応対処の努力は、理性的な「現実への対処」です。

約4年半といわれているグリーフの期間は、「心的反応」と「現実への対処」のあいだを揺れ動きます。

【グリーフケアに求められること】

大切な人を失った遺族の悲しみに対して、実際にケアをおこなう人には、親族をはじめ、友人や知人、医療関係者やグリーフ・アドバイザーやカウンセラーが挙げられます。

悲嘆のなかにいる遺族にとって、ケアにたずさわる人に求められることは、どのようなことでしょうか。

悲しみのなか、揺れ動きをみせるこの期間は、大切な人との別れの後に続く自分の人生に向き合い、新しい生活に踏みだそうとする過程です。

写真はイメージです。 photo by WIKIMEDIACOMMONS

グリーフケアでは、遺族のかたがたの相談に耳を傾け、寄り添い、グリーフの過程の中で遺族が人間的に成長し、立ちなおるためのサポートが求められます。

終末期の患者さんとその家族においても、グリーフケアにおいては重要な役割を担っています。

回復の見込みがなく、治癒が望めない患者さんに、残りの人生をより充実した、より豊かな時間として過ごしてもらうケアをめざします。「死への恐れ」や身体の苦痛を親族や友人との会話でやわらげ、患者さん本人、その家族のグリーフをフォローします。

遺族にとって、最期のときを知っている人が居るということは大きな意味を持ちます。特別なことをしなくても遺族が話せる、相談できるということは、それだけでグリーフのケアをおこなっています。

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